俘虜ふりょ)” の例文
あるいはカルカッタの牢獄ろうごくにおける百二十三人の俘虜ふりょの窒息死(5)などの記事を読むとき、もっとも強烈な「快苦感」に戦慄せんりつする。
「ふん、あれはノートル・ダムだろう。おれたち俘虜ふりょども一同そろって、はやく武運をさずけたまえと、おいのりにいこうじゃないか」
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこには、土人たちに取り巻かれて、昨夜運命を、船と共に決したとばかり思われたグレプニツキーが、無残な俘虜ふりょ姿をさらしているのだ。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
営内の裏には、さきに俘虜ふりょとした大量の蛮兵が、真っ黒にかたまっていた。いま孔明はそこへ出て、戒諭かいゆを与えていた。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは俘虜ふりょの中から、陶工をつれて帰れということでありました。秀吉は武人でありましたがなかなかの風流人ふうりゅうじんで、ことのほか茶事ちゃじに熱心でありました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
負傷をうけ、病におかされ、敵地に俘虜ふりょとなってさいなまれ、最後に、やせた脚を引きずって家路をたどり、幼年時代の場所にいこいをもとめて帰ってきたのだ。
朝鮮征伐せいばつの時の俘虜ふりょの男女千三百四十余人も、江戸からの沙汰さたで、いっしょに舟に乗せてかえされた。
佐橋甚五郎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
松下の村たる、南は大川を帯ぶ、川の源、渓間数十里、人く窮むるなし、けだし平氏遺民の隠匿いんとくする処。その東北二山の大なる者は唐人山と為す、朝鮮俘虜ふりょ鈞陶きんとうする処。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
それを待構えた残忍な悪太郎は、蚊帳かやの切れで作った小さな玉網でたちまちこれを俘虜ふりょにする。そうして朝の光の溢るる露の草原を蹴散らして凱歌をあげながら家路に帰るのである。
(新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
露西亜ロシア俘虜ふりょの中でも一番強力な暴れ者を猫の前の鼠の如くならしめたという怪力、怪術無双の変り者で、筆者ともかなり心安かったので自然この話を同氏の直話として洩れ聞いた訳である。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
当時収容中の俘虜ふりょの独逸将校の夫人が惨殺されたことがあって、その犯人と目ざす男を逮捕したところ、現場の指紋と犯人の指紋とが、似てはいるのですけれど、どうしても同一とは思われないので
八万の独逸俘虜ふりょが既に武装しつつあることの危険を報じます。
何故の出兵か (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
ははあ、これでみると、俺はとうとう怪塔王の一味のため、俘虜ふりょになって、穴倉かどこかへほうりこまれたのにちがいない。ちぇっ、ざ、残念だ。無念だ。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「汝はきょうの戦いに、敵の俘虜ふりょになったと聞いたが、どうしてこれへ戻ってきたのか」
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
驚いて見ていると、この暴君はまもなくこの哀れな俘虜ふりょを釈放して、そうしてあたかも何事も起こらなかったように悠々ゆうゆうとその固有の雌鳥の一メートル以内の領域に泳ぎついて行った。
あひると猿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
「ばかをいってら。誰がそんなことで死ぬもんか。僕の方が骸骨を俘虜ふりょにしてお土産みやげに持って来てやるよ」
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
汽車の中で揺られている俘虜ふりょの群の紹介から、その汽車が停車場へ着くまでの音楽と画像との二重奏がなかなくうまく出来ている。序幕としてこんなに渾然こんぜんとしたものは割合に少ないようである。
映画雑感(Ⅵ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
相手は、自分を俘虜ふりょにしたいのであって、殺すつもりではないことを、はやくも見ぬいていたからです。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「そうか。それでは空軍へすぐさま、こう伝えろ。海底超人の王子ロローなるものが、いま本船の左舷後方にいるから俘虜ふりょにするように、と打電だでんするんだ。すぐやるんだぞ」
海底大陸 (新字新仮名) / 海野十三(著)
編集長「ところがその俘虜ふりょの勇士だというのが、僕の知っている日本人だったんだ」
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この間○○の動物園に、日本勇士の俘虜ふりょを檻に入れてあるというので、わいわい見物人が押し寄せていると通信があった。僕はついでがあったので、こっそり寄ってみた。ひどいことをしてあったぜ
諜報中継局 (新字新仮名) / 海野十三(著)
、わが海軍に知らせるまでは、死んだり俘虜ふりょになってはいけない
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)