体臭たいしゅう)” の例文
旗と、人と、体臭たいしゅうと、あせに、もまれ揉れているうち、ふと、ぼくは狂的な笑いの発作ほっさを、我慢がまんしている自分に気づきました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
女史のむっちりした丸くて白い頸部けいぶあたりに、ぎらぎら光る汗のようなものがにじんでいて、化粧料けしょうりょうから来るのか、それとも女史の体臭たいしゅうから来るのか
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たちまち、一人の女の眼が、孔雀石くじゃくいしの粉を薄くつけた顔が、ほっそりした身体つきが、彼に馴染なじみのしぐさと共になつかしい体臭たいしゅうまでともなって眼前に現れて来た。ああ懐かしい、と思う。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
しかしこの時、あなたの一杯に毛の生えた脚の、女らしい体臭たいしゅうせると、ぼくはぞっとしていたたまれず、「熊本さんはふとりましたね」とかなんとか
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
彼女のなやましい体臭たいしゅうの影にぴったりとついて行くと、チェリーは楽手がくしゅのいないピアノの側へつれていった。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
いよいよ、好い気持になって、ワアワアへしあってくる娘さん達の、香油こうゆと、あせと白粉のムッとする体臭たいしゅうにむせていると、いきなり、また吃驚びっくりさせられました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
障子しょうじふすまとを、一つ一つ開けて行ったが、果して、誰も居なかった。若い女の体臭たいしゅうが、プーンとただよっていた。壁にかけてあるセルの単衣ひとえに、合わせてある桃色の襦袢じゅばんえりが、重苦しくなまめいて見えた。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)