伝言ことづて)” の例文
旧字:傳言
このはなしおまえさえ知らないのだものだれが知っていよう、ただ太郎坊ばかりが、太郎坊の伝言ことづてをした時分のおれをよく知っているものだった。
太郎坊 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
あのひとは、僕が君の伝言ことづてを伝えてやったら、それを聞いてとても喜んでいたよ。いや、なあに、あのひとが喜んでいる素振りを
お定は呆然ぼんやりと門口に立つて、見るともなくそれを見てゐると、大工の家のお八重の小さな妹が駆けて来て、一寸来て呉れといふ姉の伝言ことづてを伝へた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「それはそうと姐ごどうしたんで、今夜ここへ来るようにと、私に伝言ことづてをなすったので、そこでやっては来たんですが、どういうご用がおありなさるので?」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ほかじゃございませんが、万七の伝言ことづてを持ってめえりました。——訴人があって、放火ひつけは仲吉に決ったから、縄張違いだが、八丁堀の旦那方のお指図で挙げて行く。
ついては、丹波に萩乃を守って、あとから追いつくようにという伝言ことづてだったと、もっともらしい口構くちがまえ。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
合宿所へ行くと、伊作はいたが、姿を見せず、ホテルのポーターのようなのが、代りに出てきて、磯子の萩ノ家という家で待っていてくれ、すぐ行くから、と伊作の伝言ことづてをつたえた。
野萩 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
セエラなら、むずかしい用事や、こみいった伝言ことづてなども、安心して頼むことが出来ました。お金を払いにやっても間違いはないし、ちょっとしたお掃除も、器用にやってのけるのでした。
昨夜女中から聞いた伝言ことづてが、気にかかってならなかったからである。
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
藤助 剣身を食わした入れ合せに、伝言ことづてを承わって置こうか。
中山七里 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
可児才蔵かにさいぞうという人からたのまれている伝言ことづてもあったっけ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あの伝言ことづては彼の心をひどく悩ませたので、彼は何度も帽子を脱いで頭をがりがり掻くよりほかに仕方がないくらいであった。
「帰れとの伝言ことづてはございますが……あなた様が、ここにおいでのうちは……なんのわたくし家へなど……」
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「驚くでしょう、こいつは。あっしのところへ知らせて来たのは、まだ夜が明けたばかりの時だ。親分へ伝言ことづてをやって、叔母さんに朝のおさいを頼んで飛んで行ってみると——」
馬を早足で歩ませながら引返している間、夜の影は、彼にとっては、その伝言ことづてから生じたような形をしているように見え、その牝馬にとっては
実父ちちの将左衛門から、久しく逢わないから逢いたい、婿殿ともども逢いに来るようにと伝言ことづてがあった。
猿ヶ京片耳伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
父さん、みんな申上げた方がいいでしょう、——染吉さんは久し振りで逢って話したいことがあるから、父さんには内証ないしょで、私に酉刻むつ半(七時)頃お稲荷様まで来るようにと、酒屋の小僧さんに頼んで伝言ことづて
それにしても一番気にかかるのは芳江と市之丞との身の上であった。そこで彼は手をって番兵を一人呼んだのである。そうして至急鬼王丸おにおうまる殿にお目にかかりたいと伝言ことづてをした。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
お係り同心の近藤常平様のお伝言ことづてですが
そこへ突然昨夜ゆうべのこと、烏組の一人が忍んで来て、お紋の伝言ことづてをしたのである。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「高坂甚太郎の伝言ことづてをお聞きに入れとう存じます」
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「他に伝言ことづてでございます」
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)