五度いつたび)” の例文
この第百年はなほ五度いつたびも重ならむ、見よ人たる者己をすぐるゝ者となし、第二の生をば第一の生に殘さしむべきならざるやを 四〇—四二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
あ「いゝえおっかさんは今日は五度いつたび御膳をあがって、しまいにはお鉢の中へ手を突込つッこんであがって、仕損しそこないを三度してお襁褓しめを洗った」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
何度歩いても飽きない道を通って、赤坂裏へ出ると、青麦の畠が彼の眼にひらけた。五度いつたび熟した麦の穂は復た白く光った。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
知らずや、貫一は再度の封をだに切らざりしを——三度みたび五度いつたび七度ななたび重ね重ねて百通に及ばんとも、貫一は断じてこの愚なる悔悟を聴かじとこころを決せるを。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
民也はここのツ……十歳とおばかりの時に、はじめて知って、三十を越すまでに、四度よたび五度いつたびたしかに逢った。
霰ふる (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
五度いつたびここへやって来るものと助役は睨んでいるに違いない——そう思うと吉岡は一層身内が引緊ひきしまる様な寒気を覚えて、外套の襟に顔を埋めながら助役の側へ小さくなってしまいます。
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
心せはしき三度みたび五度いつたび、答なきほど迷ひは愈〻深み、氣は愈〻狂ひ、十度、二十度、哀れ六尺の丈夫ますらをが二つなき魂をこめし千束ちづかなす文は、底なき谷に投げたらんつぶての如く、只の一度の返りごともなく
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
「再びなもんか。もう四度よたび五度いつたびは失職したらう。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
民也たみやこゝのツ……十歳とをばかりのときに、はじめてつて、三十をすまでに、四度よたび五度いつたびたしかつた。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼は四度よたびの文をも例の灰と棄てて顧ざりしに、日をると思ふ程も無く、五度いつたびの文は来にけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
我等難路に入りしよりこのかた、月下の光五度いつたび冴え五度消ゆるに及べるころ 一三〇—一三二
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)