五体ごたい)” の例文
旧字:五體
ある雨の晴れ上った朝、甲板かんぱん士官だったA中尉はSと云う水兵に上陸を許可した。それは彼の小鼠を一匹、——しかも五体ごたいの整った小鼠を一匹とったためだった。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
こは不思議ふしぎおどろきおそるるを見て、武士しか/″\の事ありしが五体ごたいすくみてうごく事ならずといふ。
彼は乱せる髪を夜叉やしやの如く打振り打振り、五体ごたいみて、くちびるの血を噴きぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
五体ごたい満足まんぞく彫刻物ほりものであつたらば、真昼間まつぴるま、お前様めえさまわしとが、つら突合つきあはせた真中まんなかいては動出うごきだしもすめえけんども、つき黄色きいろ小雨こさめ夜中よなか、——ぬしいまはなさしつた、案山子かゝし歩行あるなかれたら
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
水脈みをき狂ふ爛光らんくわうに、五体ごたいとろけて
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)