云為うんい)” の例文
旧字:云爲
今日のカサルスに対して、「衰え」とか「老い」とかを云為うんいする人があったとしたならば、それは自ら音痴を告白するものである。
それ以外に奈良原翁の人格を云為うんいするものは皆、痩犬の遠吠えに過ぎなかった事実を見ても、容易に想像出来るであろう。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし因果律の解釈や、認識論学者の取扱うごとき問題は、余のここに云為うんいすべき所にあらず。ただ物理学上の立場より卑近なる考察を試むべし。
自然現象の予報 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
これはなにも某名家の訳そのものを云為うんいしたのでも何でもない。世の飜訳というもののどうにもならぬ運命を、はかない皮肉に託して述べただけの話である。
翻訳遅疑の説 (新字新仮名) / 神西清(著)
が、かく命令や意志を云為うんいするからと言って「天」を人格的なるものとして考えたというわけでもない。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
帝国議会は徳育の効果を云為うんいして、文部当局を攻撃するが常なるも、これ甚だ無理の注文である。
教育の最大目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
ヤそのまた真似のたくみな事というものは、あたかもその人が其処そこに居て云為うんいするが如くでそっくりそのまま、唯相違と言ッては、課長殿は誰の前でもアハハハとお笑い遊ばすが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
今の場合を観じまするに、戦いの勝敗そのものを、云為うんいいたす時にてはござりませぬ。
赤坂城の謀略 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
まだそこまでいっておらんのかも知れんが、水を云為うんいするなど末だと思う。近いはなしがこれは屋敷の井戸水じゃが、要するに心じゃ。うむ、お茶の有難味はこの心気の静寂境にある。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
国のためちょう念は死にいたるまでもまざるべく、この一念は、やがて妾を導きて、しきりに社会主義者の説を聴くを喜ばしめ、ようやくかの私欲私利に汲々きゅうきゅうたる帝国主義者の云為うんいを厭わしめぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
吾々門下の云為うんいすべき事柄でないかも知れないが、しかし、そうした芸風は翁の晩年に於ても吾々が日常に感銘させられ過ぎる位感銘させられていた事実であった。
梅津只円翁伝 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
そうしてまた、加速度の数値を五けた六けたまでも詳しく云為うんいする場合には、実測加速度から規準加速度を導出するためにいろいろさまざまの「補正コレクション」を要するのである。
ジャーナリズム雑感 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それでなお先生の芸術を云為うんいすることができるのか。——私はあえて筆を執ろうとする自分の無謀にも驚かざるを得ない。しかも今私は二、三の事を書きたい衝動にられ初めた。
夏目先生の追憶 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
つまり天下の政治を云為うんいする結社が区々たる知事風情ふぜいの恩義をこうむるなぞいう事は面白くないという気持であったらしいが、対岸の福岡市では時ならぬ海上の炬火かがりびを望んで相当騒いだらしい。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)