二色ふたいろ)” の例文
箔にも種類があって、一つの製品を金にするにも金箔を使うのと、同じ金であっても、金粉をいて金にするのと二色ふたいろある。
それでイブセンの道徳というものは二色ふたいろにしなければならぬのである。男の道徳、女の道徳というようにしなければならぬ。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鉄人Qには、ほんとうのロボットと、二十面相のばけたのと、二色ふたいろあるんだ。ふしぎな老人も、としよりではない。二十面相がばけていたのだ。
鉄人Q (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
不注意なわれわれ素人しろうとには花のない見知らぬ樹木はだいたい針葉樹と扁葉樹へんようじゅとの二色ふたいろぐらいか、せいぜいで十種二十種にしか区別ができないのに
あひると猿 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
なんのためだか知らないが僕はあっちこちを見廻みまわしてから、誰も見ていないなと思うと、手早くその箱の蓋を開けて藍と洋紅との二色ふたいろを取上げるが早いかポッケットの中に押込みました。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
白い桔梗ききょうと、水紅色ときいろ常夏とこなつ、と思ったのが、その二色ふたいろの、花の鉄線かずらを刺繍ししゅうした、銀座むきの至極当世な持もので、花はきりりとしているが、葉もつるも弱々しく、中のものも角ばらず
灯明之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
まア是ア詰らんもんでございますけれども、私が夜業よなべ撚揚よりあげて置いたので、使うには丈夫一式に丹誠した糸でございます、染めた方は沢山たんとえで、白と二色ふたいろ撚って来ました、誠に少しばいで
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
中川君、西洋料理で二色ふたいろのスープを
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「おや、二色ふたいろもやるのかい」
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
目のとどくかぎり、はるかの、はるかの向こうまで、二色ふたいろの同じ顔が、同じように口をあけて、笑っているのです。
鉄人Q (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ダヌンチオの主意は、生活の二大情調の発現は、この二色ふたいろに外ならんと云う点に存するらしい。だから何でも興奮を要する部屋、すなわち音楽室とか書斎とか云うものは、なるべく赤く塗り立てる。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あおと赤と二色ふたいろの鉄道馬車のともしびは、流るるほたるかとばかり、暗夜を貫いて東西より、と寄ってはさっと分れ、且つ消え、且つあらわれ、轣轆れきろくとしてちかづき来り、殷々いんいんとして遠ざかる、ひびきの中に車夫の懸声
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)