“中有(ちうう)” の例文
しかしその美(うつく)しい妻(つま)は、現在(げんざい)縛(しば)られたおれを前(まへ)に、何(なん)と盜人(ぬすびと)に返事(へんじ)をしたか? おれは中有(ちうう)に迷(まよ)つてゐても、妻(つま)の返事(へんじ)を思(おも)ひ出(だ)す毎(ごと)に、嗔恚(しんい)に燃(も)えなかつたためしはない。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
誰(たれ)か、——その誰(たれ)かは見(み)えない手(て)に、そつと胸(むね)の小刀(さすが)を拔(ぬ)いた。同時(どうじ)におれの口(くち)の中(なか)には、もう一度(ど)血潮(ちしほ)が溢(あふ)れて來(く)る。おれはそれぎり永久(えいきう)に、中有(ちうう)の闇(やみ)へ沈(しづ)んでしまつた。………
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)