不浄ふじょう)” の例文
旧字:不淨
だが、おれも、もう、物心がついていたから、本当に父親が不浄ふじょうの金を商人から取ったかとらなかったかぐれえなことは、よく分っていた。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
ふと不浄ふじょうに起きて、見るともなしに、小窓から戸外そとの闇黒をのぞくと、はなれに眠っているはずの丹下左膳、今ちょうどそこを掘りさげて
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「連れて来てはおるが、実は、打揚場に女は不浄ふじょうと考えて怪我でもしちゃあならんから、戸倉の宿に残して来た」
銀河まつり (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毎朝まいちょう不浄ふじょうのもの検査すべければ薬局に送り届けよなぞ、医師はおごそかにいひ置きて帰り行きぬ。わがには父いませし頃より二十年あまりも召使ふ老婆あり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
不浄ふじょうの金も生きてくるんで」と、おおげさなことをいった。何の意味か分らず、え、何? と聞き返す高子に、実枝は何でもないというような少し甘えた笑い顔を向け
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
その夜おれと山嵐はこの不浄ふじょうな地をはなれた。船が岸を去れば去るほどいい心持ちがした。神戸から東京までは直行で新橋へ着いた時は、ようやく娑婆しゃばへ出たような気がした。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それでも樹木じゅもくを植え、吾が種をき、我が家を建て、吾が汗をらし、わが不浄ふじょうつちかい、而してたま/\んだ吾家の犬、猫、鶏、の幾頭いくとう幾羽いくわを葬った一町にも足らぬ土が
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「ああ、お前の身には不浄ふじょうがある。それを洗って来なければお札は上げられない」
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
あの虎の皮は英国のハッチンソン卿から贈られたものだが、不浄ふじょうへ落ちては仕方がない。畑をほってめるがよい。ただし杉山をとがめるなよ、かわいそうじゃ。腕を打った上に、長く臭名を
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ご不浄ふじょうへ行ったんじゃないこと」
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「けがれ不浄ふじょうのものでござい。」
蠅を憎む記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
風呂場、不浄ふじょう、水口、縁先等、いま一度、戸締りを見ろ。掛金かけがねさん、その他に異常なきやを確めるのだ。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
如何なる不浄ふじょうれざるなく、如何なる罪人も養わざるは無い。如何なる低能の人間も、爾の懐に生活を見出すことが出来る。如何なる数奇さくきの将軍も、爾の懐に不平を葬ることが出来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
『出ろっ、出てゆけ。不浄ふじょうだ。小屋がけがれる』
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
知らねえで不浄ふじょう縄にかかれるかッ? よ! 一言! よう! 名を言え、訴人の名を言えよ名をウ——!
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「かたじけない。なアに」と笑って、「不浄ふじょう役人の五十や六十——」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)