)” の例文
豪士の子の狩屋三郎は、御家人の伜の尾崎友次郎ほどは威張つて居ませんが、それでも兎もすると、江戸の岡つ引をた眼に見ようとします。
おいに代筆を頼もうと思ったが、せっかくあげるのに自分でかかなくっちゃ、坊っちゃんに済まないと思って、わざわざたがきを一返して、それから清書をした。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
われからに出るなどは宗家の威を損ずるなどとは思ってもみず、ただ温厚な老人が行けば、下手へた破綻はたんはして来まいと、憲房に嘱したあとはもう忘れ顔なのである。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼女はあわててそれらの物を鸞帯らんたい(胴巻)へおしこみ、腹の下に抱いて、そら寝入りをつかっていた。もちろん、その足音は、宋江だった。悄然しょうぜんとして、しかも
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこは階段をのぼらない津田の想像で判断するよりほかにみちはないとして、今聴えた障子の音の出所でどころは、一番階段に近い室、すなわちたから見える壁のすぐうしろに違なかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
弟の、弟らしい気色けしきばンだ反撥ぶりを、高氏は微笑に見つつ、に言った。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが間違ってる。君等は義経が鵯越ひよどりごえとしたことだけを心得て、義経でさえ下を向いて下りるのだから猫なんぞは無論た向きでたくさんだと思うのだろう。そう軽蔑けいべつするものではない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)