下剋上げこくじょう)” の例文
清軍派も皇軍を本来の姿にひきもどすのだと主張しているが、そのため青年将校の動きを下剋上げこくじょうだとしてしりぞけている。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
下剋上げこくじょうの世であった。政治の実権が魯侯ろこうからその大夫たる季孫氏きそんしの手に移り、それが今やさらに季孫氏の臣たる陽虎という野心家の手に移ろうとしている。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
軍の内部は、下剋上げこくじょうで、陸軍大臣も、海軍大臣も、ほとんど結束した青年将校を、抑えることはできなかった。
「ぜひもない、世は下剋上げこくじょうだ、高氏も荒駒の背だ、下手な手綱では振り落されよう。だが、使者の宿所へ一軍さし向けたとか。どんな指揮をとらせたのか」
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何よりおそろしいのは、両派の巨頭連きょとうれんが、自分たちの勢力を張るために、青年将校の意をむかえることに汲々きゅうきゅうとして、全軍に下剋上げこくじょうの風を作ってしまったことだ。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
奢侈しゃし下剋上げこくじょうの風習が、勤倹質素尚武となり、幕府瓦壊の運命を、その後も長く持ちこたえたのであった。
銅銭会事変 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
だから両軍から別に憎怨ぞうおんせられず、戦乱に超越して風流を楽んで居られたのである。政治的陰謀の激しい下剋上げこくじょうの当時に於て、暗殺されなかっただけでも相当なものだ。
応仁の乱 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
誰か一人、ここで下剋上げこくじょうの口火を切る者があれば、天下こぞって起ち上るのだ。臣下が主君に怨みを報ずる。じつに驚天動地の痛快事じゃあないか。それには今貴様は、絶好の立場におるのに——。
稲生播磨守 (新字新仮名) / 林不忘(著)
ややもすれば下剋上げこくじょうの階級闘争を煽るやからの一味ととうの故意にした振舞! 公儀役人に悪感情を持つやからが、わざとその出張を見はからってした嘲弄だ! こういうふうに解釈されたから
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
だが、これらの下剋上げこくじょうを急にし出した原因の一つには、北朝に仕えていた公卿の卑屈ということもある。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
強請ごうせい押借おしがりというようなことが、思うように効果があがらなくなったのと、いうところの下剋上げこくじょう——下級したの者すなわち貧民達が、上流うえの者を凌ぎ侵しても、昔のようには非難されず
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
下剋上げこくじょうがあらわれる。室町幕府の弱体は、余りにも、久しい前から、見すかされていた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)