上田うえだ)” の例文
「明日から二、三日、学校の方を休みたいと思うから、これを早稲田の上田うえださんへお届けして、お願いして来てくれ」
幽霊妻 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
信州上田うえだの人で児玉こだま政雄まさおという医者がひところ馬籠に来て住んでいたことがある。その人に『詩経しきょう』の句読くとうを受けたのは、半蔵が十一歳の時にあたる。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「真田源次郎どのとおおせあると、上田うえだ城主じょうしゅ真田昌幸さなだまさゆきどののご一、秀吉公の手もとでやしなわれているとうわさにききましたが、その源次郎どのでござるか」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
このあいだ上田うえだの家からもらって来たダーリアはどうしたものか少し芽を出しかけたままで大きくならぬ。
花物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
大垣おおがきの附近にはゴチソウサンゴト、信州でも上田うえだ地方にはヨバレッコもしくはオンバレコ、これは新旧二つの方言のたがいに接近してまぎれやすくなった例である。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
もう一人は上田うえだ屋という貸本屋の主人であった。上田屋は江戸時代からの貸本屋で、番町ばんちょう一円の屋敷町を得意にして、昔はなかなか繁昌したものだと伝えられている。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
御淋おさびしゅう御座りましたろう、御不自由で御座りましたろうと機嫌きげん取りどり笑顔えがおしてまめやかに仕うるにさえ時々は無理難題、先度せんど上田うえだ娼妓じょうろになれと云いかかりしよし。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
陸軍省の斡旋あっせんによって長野県上田うえだ市より程遠からぬ××温泉の裏山にある某貴族の別荘が借り入れられ、老博士を首班とする秘密設計班の人々が、その広い建物を独占していた。
偉大なる夢 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
火点ひともしごろ過ぎて上田うえだに着き、上村に宿る。
みちの記 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
箱根はこね強羅ごうらを思い出させる。また信州しんしゅうに「ゴーロ」という山名があり、高井富士たかいふじの一部にも「ゴーロ」という地名がある。上田うえだ地方方言で「ゴーロ」は石地の意だそうである。
言葉の不思議 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)