三歩みあし)” の例文
二歩ふたあし三歩みあしひよろついてるとおもふと、突然いきなり、「なにをするんだ。」といふものがある。
廓そだち (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ごとりごとりと云う音がする。たしかに台所の入口である。暗いなかを影の動くように三歩みあしほど音のする方へちかづくと、もう部屋の出口である。障子しょうじが立っている。そとはすぐ板敷になる。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は何の気なしに一歩ひとあし礦場こうじょうの中へ踏込んだ。やはり四辺あたりに人の気はいがせなかった。私は不思議に思って怖る怖る誰かに怒鳴どなられはせぬかと心に不安を感じながら二歩ふたあし三歩みあし中へ入って行った。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
長火鉢に寄っかかッて胸算用むなさんように余念もなかった主人あるじが驚いてこちらを向く暇もなく、広い土間どま三歩みあしばかりに大股おおまたに歩いて、主人あるじの鼻先に突ったッた男は年ごろ三十にはまだ二ツ三ツ足らざるべく
忘れえぬ人々 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
通り過ぎて一二間行ったと思うと、女どもはげたげた笑った。清三がふり返ると一番年かさの女がお出でお出でをして笑っている。こっちでも笑って見せると、ずうずうしく二歩ふたあし三歩みあし近寄って来て
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
と怒りに堪えず二歩ふたあし三歩みあしきに掛りますと
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一歩ひとあし二歩ふたあし三歩みあし……。」
香爐を盗む (新字新仮名) / 室生犀星(著)
お源は水を汲んで二歩ふたあし三歩みあし歩るき出したところであった。
竹の木戸 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)