一群ひとむ)” の例文
「ウム。……旋風つむじでもないな。……ほう、先のひとかたまり、また、あとからの一群ひとむれ。——何だろう、たしかに人数だ」
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
葉子の目から見た親類という一群ひとむれはただ貪欲どんよく賤民せんみんとしか思えなかった。父はあわれむべく影の薄い一人ひとりの男性に過ぎなかった。母は——母はいちばん葉子の身近みぢかにいたといっていい。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
なおわが地位をくつがえすに足らざりけんを、日ごろ伯林ベルリンの留学生のうちにて、ある勢力ある一群ひとむれと余との間に、おもしろからぬ関係ありて、かの人々は余を猜疑さいぎし、またついに余を讒誣ざんぶするに至りぬ。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
そして、つかれて、やまいただきやすんでいると、空遠そらとおく、がんの一群ひとむれが、羽音はおときざんで、うみほうをさしていくのがられたのでした。このとき、すずめは、自分じぶん故郷こきょうおもしたばかりでありません。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
人穴城ひとあなじょうがやけた轟音ごうおんは、このへんまで、ひびいたとみえて、うちに落着けないさとの人があっちに一群ひとむれ、こっちにひとかたまり、はるかにのぼる煙へ小手をかざしながら
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もっとも、そこから二町ほど彼方かなたを、一群ひとむれの人間が、とぼとぼ山の方から降りて来るのはあったが、朱実の悲鳴を聞いても、こっちへ救いに駈けつけて来ようとはしなかった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、一群ひとむれの騎馬が渉って来る。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)