一朝ひとあさ)” の例文
鳥屋とやれる小鳥ことりは、一朝ひとあさに六十や七十ではきかないとひました。この小鳥ことりれるころには、むら子供こどもはそろ/\猿羽織さるばおりました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
つれてきた若衆わかしゅうの話によると、ちちしぼりは非常ひじょうにじょうずで朝おきるにも、とけいさえまかしておけば、一年にも二年にも一朝ひとあさ時間をたがえるようなことはない。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
で、いよいよ移居ひっこしを始めてこれに一朝ひとあさ全潰まるつぶれ。傷もいたんだが、何のそれしきの事にめげるものか。もう健康な時の心持はわすれたようで、全く憶出おもいだせず、何となくいたみなじんだ形だ。
「宮本さんがさ。——だから、来年一月の一日ついたちから七日ななくさまでの間、毎朝、五条大橋の上で待っているから、その七日なのかのうちに、一朝ひとあさそこへ来てもらいたいというのさ」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
菖蒲あやめさいていたそうでその花を一朝ひとあさ奇麗にもぎって、戸棚の夜着やぎの中に入れてあった。
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玉蘭はくれんは空すがすがし光一朝ひとあさにしてひらき満ちたる
黒檜 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一朝ひとあさ二朝ふたあさのことではありませんでした。
「その本位田又八におまえが会って、わしがこういったと伝えてくれ。来年一月の一日ついたちから七日まで、毎朝五条の大橋へ行って拙者が待っているから、その間に、五条まで一朝ひとあさ出向いてくれいと」
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)