一切いつせつ)” の例文
かゝる誤りは萬朝報よろづてうはうに最もすくなかつたのだが、先頃さきごろほかならぬ言論欄に辻待つぢまち車夫しやふ一切いつせつ朧朧もうろうせうするなど、大分だいぶ耳目じもくに遠いのがあらはれて来た。
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
かたじけないけれど、僕の迷は未だ覚めんのだから、間は発狂してゐる者と想つて、一切いつせつかまひ付けずに措いてくれ給へ」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
出せかしと勸告せらるゝむきもあれどイヤ其の仰せは僻事ひがごとなりもと堅く出て左樣ないやらしき儀一切いつせつ謝絶諸事頼朝流の事と取極め政子崇拜主義となりぬ皆樣みなさんも是非饗庭黨あへばたうとなり玉へ世の中まことに穩かにて至極野氣のんきで第一は壽命の藥女は命を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
昼のうち頭重つむりおもく、胸閉ぢ、気疲劇きづかれはげしく、何を致候も大儀たいぎにて、けて人に会ひ候がうるさく、たれにも一切いつせつくち不申まをさず唯独ただひと引籠ひきこもり居り候て、むなしく時の候中さふらふうちに、此命このいのちの絶えずちとづつ弱り候て
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)