“わるび”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
悪怯72.7%
9.1%
悪冷4.5%
4.5%
4.5%
4.5%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
左太夫が倒れると、右近は少しも悪怯わるびれた様子もなく、蒼白な顔に覚悟の瞳を輝かしながら、左太夫の取り落した槍をひっさげてそこに立った。
忠直卿行状記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
彼女は、軽く会釈えしゃくすると、静まり返っている聴衆の間の通路を、わるびれもせずはるか前方の自分の席へ帰って行った。信一郎は可なり熱心な眼付で、彼女を見送った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
巡査の制服は一気に夏服になったけれども、その年の気候はひどく不順で、その白服がうらやましいほど暑い時と、気の毒なほど悪冷わるびえのする日が入れ代わり立ち代わり続いた。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
帽子も鉄鞭てつべんも、ふところにせしブックも、薩摩下駄さつまげたかたしも投散されたる中に、酔客すいかくは半ば身をもたげて血を流せる右の高頬たかほを平手におほひつつ寄来よりくる婦人を打見遣うちみやりつ。彼はその前にわるびれず会釈して
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
勝見はすこしもわるびれる様子もなく、扉をあけて去りました。兄夫婦の間には、しばらく白々しい沈黙が過ぎて行きました。
赤耀館事件の真相 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼女はわるびれた様子もなく、ジッと眼をつぶっていた。花びらが落ちたような小さなふっくらとした朱唇しゅしんが、ビクビクと痙攣けいれんした。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)