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やさけび
其の
実、
矢叫の
如き
流の
音も、
春雨の
密語ぞ、と
聞く、
温泉の
煙りの
暖い、
山国ながら
紫の
霞の
立籠る
閨を、
菫に
満ちた
池と見る、
鴛鴦の
衾の
寝物語りに——
主従は
三世、
親子は
一世
彼の古戦場を
過つて、
矢叫の音を風に聞き、
浅茅が
原の月影に、
古の都を忍ぶたぐひの、心ある人は、此の
媼が六十年の昔を
推して、世にも
希なる、
容色よき
上﨟としても
差支はないと思ふ