-
トップ
>
-
とほまき
此大騷動の
後は、
猛獸も
我等の
手並を
恐れてか、
容易に
近づかない、それでも
此處を
立去るではなく、
四五間を
距てゝ
遠卷に
鐵檻の
車を
取圍きつゝ、
猛然と
吼えて
居る。
遣手も、
仲居も、
女どもも
驅けつけたが、あきれて
廊下に
立つばかり、
話に
聞いた
芝天狗と、
河太郎が、
紫川から
化けて
來たやうに
見えたらう。
恐怖をなして
遠卷に
卷いてゐる。
家に
仕ふる者ども、其物音に
駈附けしも、主人が血相に
恐をなして、
留めむとする者無く、
遠巻にして打騒ぎしのみ。
殺尽せしお村の死骸は、竹藪の中に
埋棄てて、
跡弔もせざりけり。