-
トップ
>
-
ぢくぎ
卯平は
目を
蹙めた
儘燐寸をとつて
復すつと
擦つて、ゆつくりと
軸木を
倒にして
其の
白い
軸木を
包んで
燃え
昇らうとする
小さな
火を
枯燥した
大きな
手で
包んで、
大事相に
覗いた。
慌てた
與吉の
手は
其の
軸木の
先から
徒らに
毛のやうな
煙を
立てるのみであつた。
彼は
焦躁れて
卯平の
足もとの
灰へ
燐寸の
箱を
投げた。
箱はからりと
鳴つた。
箱の
底はもう
見えて
居たのである。