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ちゝいろ
眞白な
薔薇の花、
乳色で、
無邪氣で
眞白な
薔薇の花、あまりの
潔白には
人も
驚く、
僞善の花よ、
無言の花よ。
とまれ、十
年前の
秋の一
夜、
乳色の
夜靄立ち
罩めた
上海のあの
茶館の
窓際で
聞いた
麻雀牌の
好ましい
音は
今も
僕の
胸底に
懷しい
支那風を
思ひ
出させずにはおかない。
それは
乳色の
夜靄が
町の
燈灯をほのぼのとさせるばかりに
立ち
罩めた
如何にも
異郷の
秋らしい
晩だつたが、
僕は
消息通の一
友と
連れ
立つて
上海の
町をさまよひ
歩いた。