-
トップ
>
-
いしやうかばん
忽ち、ざつとなつて、ポンプで
噴くが
如く、
泥水が
輪の
両方へ
迸ると、ばしやんと
衣裳鞄に
刎ねかゝつた。
運転手台の
横腹へ
綱を
掛けて
積んだのである。
と
冷かしたが、
元来、
衣裳鞄の
催促ではない、ホツキ
貝の
見舞に
来たのだから、
先づ
其次第を
申述べる
処へ……
又近処から、おなじく、
氷砂糖、
梅干の
注意連の
女性が
来り
加はつた。
緑蝶夫人といふ
艶麗なのが、
麹町通り
電車道を
向うへ、つい
近所に、
家内の
友だちがあるのに——
開けないと
芬としないが、
香水の
薫りゆかしき
鬢の
毛ならぬ、
衣裳鞄を
借りて
持つた。