れい)” の例文
旧字:
平家の人びとのれいは、まだじゅうぶんには、なぐさめられなかったとみえます。つぎの物語ものがたりはこのふしぎなことのひとつであります。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
若しちよくにしてなく、はんにしてれいならずんば、又是病なり。故に質を存せんと欲する者は先づすべからく理径明透して識量宏遠なるべし。
文芸鑑賞講座 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
玄翁げんのう殺生石せっしょうせきまえすわって、熱心ねっしんにおきょうみました。そして殺生石せっしょうせきれいをまつってやりました。殺生石せっしょうせきがかすかにうごいたようでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そこでもう所詮しょせんかなわぬと思ったなり、これはこの山のれいであろうと考えて、杖をてて膝を曲げ、じりじりするつちに両手をついて
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うれしくもまうでつるよ、と聞ゆるに、新院のれいなることをしりて、地にぬかづき涙を流していふ。さりとていかに迷はせ給ふや。
こういう日の食物は、まず神々にそなえ、先祖せんぞれいにすすめ、それと同じ物をわれも人も、ともどもに食べるから、ことに楽しかったのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それがどうかした偶然の機会に、ふっとよみがえって来る、墓場の中からゆうれいが現れる様に恐しく大きな、物すごい形になってうかび上って来る。
疑惑 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
代助は肉のと、れいの愛にのみおのれを捧げて、其他を顧みぬ女の心理状体として、此話を甚だ興味あるものと思つた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
国中の山のれいを支配してる山の神に聞けば、きっとわかるにちがいない。「だが……まてよ」と禿鷹は考えました。
コーカサスの禿鷹 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
と、れいを慰め、それからそれへと、思い出される事やら欣しさやらで、一日中、欣し泣きに泣いていた事であった。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山水れいあらば、まさにその濫証らんしょうを笑うべしといえども、彼の真意は、前者に在らずしてもとより後者に在るなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
そして、いつしか、かれおなじように、先祖せんぞれいたいして、それをなぐさむることをおこたらなかったからです。
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
此処から見ると㓐別は一目だ。関翁は此坂の上に小祠しょうしてゝ斃死へいしした牛馬のれいまつるつもりで居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
たかだのおおかみだのかわうそだののれいあわれなシャクにのり移って、不思議な言葉をかせるということである。
狐憑 (新字新仮名) / 中島敦(著)
それを見ると生前検校がまめまめしく師につかえてかげの形にうように扈従こしょうしていた有様がしのばれあたかも石にれいがあって今日もなおその幸福を楽しんでいるようである。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
かりそめの物もまもりとしてうやましんずればれいある事むなしからず、人のはきすてたる草鞋わらんづだに衆人しゆうじんしんぜしによりて、のち/\は草鞋天王そうあいてんわうとてまつりし事、五雑組ござつそに見えたり。
トラ十は他の都会で働いていたが、このことを聞いて非常に怒ったが、この怒りを胸におさめて、いつかターネフをやっつけて父のれいなぐさめてやろうと思っていたのだ。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今、この悲しい詩人のれいは、雑司ヶ谷ぞうしがやの草深い墓地の中に、一片の骨となって埋まっている。
かれらなんじらをわたさば、如何いかになにをわんとおもわずらうな、うべきことは、そのときさずけられるべし。これうものは汝等なんじらにあらず、うちにありていたまうなんじらのちちれいなり。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
死の世界へ陥りかけて、まだ微かに生気を取り残している慌しい「たましい」と死の世界に生きている静かな「れい」とはこうして互に顔を見合ったまま何事かを語り合おうとしていた。
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
きんの飾が光るのか。非常に強いれいの力がほのおになって燃え立つのか。容易には分からない。
明治二十四年四月十九日いわゆる『第一高等中学校不敬事件』ののちに、余のためにその生命をすてし余の先愛せんあい内村加寿子につつしんでこの著を献ず、願くは彼女のれいてんに在りて主とともに安かれ。
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
もちろん最初さいしょ父母ふぼれいことははれい熱心ねっしんなお手伝てつだいもありますが、だんだん生長せいちょうするとともに、ますます守護霊しゅごれいはたらきがくわわり、最後しまいには父母ふぼからはなれて立派りっぱに一ぽんちのとなってしまいます。
をんな節操せつそうことにくれいことこひあいことをんなは二度目どめこひ持得もちうるかとことをんな最初さいしよこひわするかとことなど、れかられへとちからにもおよばぬ問題もんだいはてしなくわたしくるしめる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
わがれいあへがれぬ。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
虚空そら高くれいの羽ばたき
しやうりの歌 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
其処そこでもう所詮しよせんかなはぬとおもつたなり、これはやまれいであらうとかんがへて、つえてゝひざげ、じり/\するつち両手りやうてをついて
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
五二壇場だんぢやうの御前なる三の松こそ此の物の落ちとどまりしところなりと聞く。すべて此の山の草木泉石せんせきれいならざるはあらずとなん。
自分はどうあっても女のれいというかたましいというか、いわゆるスピリットをつかまなければ満足ができない。それだからどうしても自分には恋愛事件が起らない
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そう思いついて彼は、ある山のうえに飛んでいって、大きな岩の上にとまって、山のれいにたずねてみました。
コーカサスの禿鷹 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
独楽の心棒しんぼうは蛾次郎がほおずりするあぶらをうけて、くらやみのなかでもまわりそうになった。なんだかこの独楽にはれいがあっていきてるもののように思われる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それからそのそばに、あみだ寺をたてて、とくの高いぼうさんを、そこにすまわせ、あさゆうにおきょうをあげていただいて、海のそこにしずんだ人びとのれいをなぐさめました。
壇ノ浦の鬼火 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
れいは遠い浪のあひだに、高々と両手をさし上げながら、舟中しうちうの客をのろつてゐる。又或霊は口惜くやしさうに、舟べりを煙らせた水沫しぶきの中から、ぢつと彼の顔を見上げてゐる。
LOS CAPRICHOS (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
裏の物置に大きな青大将あおだいしょうが居る。吉さんは、其れを先々代の家主のかみさんのれいだと云う。兎に角、聞く処によれば、これまで吉さんの言が的中てきちゅうした例は少なくない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
もうそのおかあさんは、この世界せかいのどこをさがしてもいられないが、おかあさんのおしえだけは、かならずまもりますと、正吉しょうきちは、おかあさんのれいかって、ちかったのであります。
世の中へ出る子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
救うのがいやだからではないのだ。僕は友人たちがくる前に、船長室のあの不気味ぶきみかざりものを処分しよう。死者ししゃれいをあつかう役目に僕を任命していただければ、光栄だ
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
八幡太郎はちまんたろうれいまもっていてくれるとおもって、いくさはげんだものでした。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
文字のれいなどというものが、一体、あるものか、どうか。
文字禍 (新字新仮名) / 中島敦(著)
れいどもと山の洞穴のあたりを飛行ひぎょうすることは出来まいか。
あな嬉しれい御告おんつげ
しやうりの歌 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)
白帆しらほりゆくれいふね
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
雨が二階家にかいやの方からかかって来た。音ばかりして草も濡らさず、裾があって、みちかようようである。美人たおやめれいさそわれたろう。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
左内いよいよ興に乗じて、れいの議論きはめて一三〇妙なり。ひさしき疑念うたがひ今夜こよひせうじつくしぬ。こころみにふたたび問はん。
そしていかなる苦しみをなめても、呂宋兵衛をうちとり、小角のれいをなぐさめなければならぬと、毎日広野こうやへでて、武技ぶぎをねり、陣法の工夫くふう他念たねんがなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
するとその山のれいは、いばりもしなければへりくだりもしないで、岩の中からひややかに答えました。
コーカサスの禿鷹 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
ミドリの兄は天津百太郎あまつももたろうといって、失踪しっそうしたロケットの操縦士だった。彼女はこんどの探険をくわだてたのも、うらみをのんで死んだろうと思われる兄のれいを喜ばそうためだった。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
見世でうかゞへない身代しんだい画工ゑかきの担任区域以外とあきらめべきものだよ。だから我々はにくばかりいてゐる。どんなにくいたつて、れいこもらなければ、死肉だから、画として通有しない丈だ。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
長年ながねん苦楽くらくともにした女房にょうぼうが、また、せがれにはやさしかったははが、いまはれいとなって、ここにはいり、なにもかもじっとているがして、おじいさんは花生はないけのみずをかえ、かねをたたいて
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
お前達、れいども。お前達は己の傍にさまよっていよう。
やわらぎのれいはな
文月のひと日 (新字旧仮名) / 末吉安持(著)