気持きもち)” の例文
旧字:氣持
で、その白鳥はくちょうは、いまとなってみると、いままでかなしみやくるしみにさんざん出遭であったことよろこばしいことだったという気持きもちにもなるのでした。
林太郎はへんな気持きもちになりました。そしてそのむく犬がとてもなつかしくなりました。自分のきょうだいぶんのような気がしてきました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
「お欠餅かきもちを焼いて、熱い香煎こうせんのお湯へ入れてあげるから、それを食べてごらんよ。きっと、そこへしこってる気持きもちがほごれるよ。」
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
王子は一人で空想くうそうにふけりながら、大空をながめてるうちに、いつか、うっとりした気持きもちになって、うつらうつらねむりかけました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
しばらくうまと一しょあそんで、わたくしたいへんかる気持きもちになってもどってましたが、そのってにもなれませんでした。
腹立はらだたしさに、なかばきたい気持きもちをおさえながら、まつろうにらみつけた徳太郎とくたろうほそまゆは、なくぴくぴくうごいていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
またあみシャツやゆるい青の半ずぼんをはいたり、青白い大きな麦稈帽むぎわらぼうをかぶったりして歩いているのを見ていくのは、ほんとうにいい気持きもちでした。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
彼等かれらはそのことをあからさまに見せつけたが、彼は気づかない様子ようすで、彼等に深い敬意けいいをしめしていた。そのため、二人の気持きもちはいくらかやわらいだ。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
けれども三千代は其方面の婦人ではなかつた。色合いろあひから云ふと、もつと地味ぢみで、気持きもちから云ふと、もう少ししづんでゐた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
おかみさんは自分じぶんむすめると、可愛かわゆくって、可愛かわゆくって、たまらないほどでしたが、このちいさなおとこるたんびに、いやな気持きもちになりました。
年級ねんきゅう生徒せいとでいるのはいい気持きもちだ——それはこの世できまった位置いちを作ってくれるからだ。しかし、一年生の生活にだって、時々いやなことがある。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
ですから、この小さな人たちがじっとお行儀ぎょうぎよくしているところは、見ていてこんないい気持きもちのことはありません。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
フトがつくと、さきんでゐるラランがなに旨味うまいものでもたべてゐるやうなおとをたてゝ、のど気持きもちよくならしてゐる。ペンペはもう我慢がまんができないで
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
わが新来の客も同じように議論に加わったけれど、ひどく要領がよかったので、一同は、この男は議論をしながら、それでいて気持きもちの好い科白せりふを使うわいと思った。
わたし勿論もちろんどつちが危険きけんだかといふ明白めいはく意識いしきなくして、たゞ漠然ばくぜんなかば謙遜けんそん気持きもちつたのであつたが、S、Hがまたさうふう謙遜けんそん意味いみこたへたのに出会であつて
微笑の渦 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
そして、それから彼等は亀のところに行って、「競走に勝った時の気持きもちをおらし下さい」
兎と亀 (新字新仮名) / ロード・ダンセイニ(著)
おとうさんの様子を考えると、じっとしていられないような気持きもちになったからです。
ふしぎな人 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
くびめてころさばころせで、這出はひだすやうにあたま突附つきつけると、真黒まつくろつて小山こやまのやうな機関車きくわんしやが、づゝづと天窓あたまうへいてとほると、やはらかいものがつたやうな気持きもちで、むねがふわ/\と浮上うきあがつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
僕はふと呼吸いき気持きもちよく吐きながら
そしてまたふたたあがってましたが、いまはもう、さっきのとり不思議ふしぎ気持きもちにすっかりとらわれて、われわすれるくらいです。
なにかくしましょう、わたくしはそのとき、このひとには、こいするひとの、本当ほんとう気持きもちわからないと、こころうちたいへんにあなたを軽視みおろしたのでございます。
コスモとコスマは、びっくりしたような気持きもちで、人形のかおに見入っていました。もうをそらすことができないで、いっしんに見入っていました。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
人知ひとしれずしのんできた同じようなくるしみとおたがいあわれみの気持きもちとが、悲しいやさしみをもって二人をむすびつけていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
かみはひっつめにって、くろかたマントをしていらっしゃる、もうそれだけで、先生せんせいうやま気持きもちがおこると一しょに、先生せんせいがどことなくきになるのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
「あたしゃもう、ここにいてさえ、いやな気持きもちがするんだから、そんなとこへるなんざ、ぴらよ。——ねえおまえさん。後生ごしょうだから、かけってとくれよ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
なやましいばかりの羞恥しゅうちと、人に屈辱くつじょくあたえるきりで、なんやくにも立たぬかたばかりの手続てつづきをいきどお気持きもち、そのかげからおどりあがらんばかりのよろこびが、かれの心をつらぬいた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
かの女は自分がそう言って居るうちに、それを自分に言ってきかせて居るような気持きもちになってしまった。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
キッコはすっかり気持きもちをわるくしてだまってまどへ行って顔を出して雨だれを見ていました。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
大久保おほくぼからせられた彼女かのぢよ手紙てがみによると、彼女かのぢよがしをらしくもかれあいすがらうとしてゐる気持きもちが、いつはりなく露出ろしゆつしてゐたが、いまかれにつれられてまへあらはれた彼女かのぢよると
彼女の周囲 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
「ああ、」とおとうさんがった。「おれはうれしくって、仕方しかたがない。まるでこう、がぱーッとしてでもるような気持きもちだ。まるでひさしくわない友達ともだちにでもまえのようだ。」
かれには一体いったいどうしていいのかわからなかったのです。ただ、こう幸福こうふく気持きもちでいっぱいで、けれども、高慢こうまんこころなどはちりほどもおこしませんでした。
帰幽以来きゆういらいなんねんかになりますが、わたくしんな打寛うちくつろいだ、なごやかな気持きもちあじわったのはじつにこのとき最初さいしょでございました。
王子はまたゆめからさめたような気持きもちで、老人ろうじんかおながめました。それから、うしろの方の一番高い山のいただきしました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そういう気持きもちをおしきって、全く誠実せいじつでないとわかっているきょくを書くような時には、をつけてかくしておいた。どう思われるだろうかとびくびくしていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
それは気持きもちが悪かった。何かよこぱらへんしわくちゃになったと思うと——やがてそのうちにシャツがやぶれて、もみくたになったという感覚かんかくが、もっとはっきりして来た。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
エチエンヌはすっかりいきを切らして四人にいつきます。四人がそんなゲートルをはかされているのを見ると、よろこんでいいのか、かなしんでいいのかわからないような気持きもちです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
もしも誰か途中とちゅうで止っていてはわるい。もっと靴下くつしたもポケットに入っているしかならず下らなければならないということはない、けれどもやっぱりこっちを行こう。ああいい気持きもちだ。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
つめたり、かみなかかおめたり、気狂きちがいじみた真似まねをしちゃァ、いい気持きもちになってるようだが、むしのせえだとすると、ちとねんがいりぎるしの。どうも料簡方りょうけんがたがわからねえ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「おれはむねかるくなったようで、大変たいへん気持きもちだ!」
まず、自分は右か左かに、どのくらいまがるくせがあるか、それをたしかめて、それから目かくしをした時は、それだけぎゃくにまがる気持きもちあるく……。
風ばか (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
また私はそこから風どもがおくってよこした安心あんしんのような気持きもちかんじてりました。そしたら丁度あしもとのすなに小さな白い貝殻かいがらまるい小さなあながあいてちているのを見ました。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
見物人けんぶつにんたちは、人形のおどりに見とれて、ゆめをみてるような気持きもちになり、声をたてるものもなくただうっとりとしていました。コスモもコスマもむちゅうでした。もういきもつけませんでした。
活人形 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そして、ほんとうに、こんなオホーツク海のなぎさにすわってかわいてんで来る砂やはまなすのいいにおいおくって来る風のきれぎれのものがたりをいているとほんとうに不思議ふしぎ気持きもちがするのでした。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それだってかえってむねがあつくなっていい気持きもちなくらいです。
イーハトーボ農学校の春 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)