女中ぢよちゆう)” の例文
『あゝつ、』といまはしさにはらつて、すはなほして其処等そこらみまはす、とそつ座敷ざしきのぞいた女中ぢよちゆうが、だまつて、スーツと障子しやうじめた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
らつしやいまし。」とわか女中ぢよちゆうあがぐちいたひざをつき、してあるスリツパをそろへ、「どうぞ、お二かいへ。突当つきあたりがいてゐます。」
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
みんなわたし恩人おんじんといふてい、いまこのやうに女中ぢよちゆうばかりあつまつて、此方こち奧樣おくさまぐらゐひとづかひのかたいとうそにもよろこんだくちをきかれるは
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
土産物みやげもの女中ぢよちゆうむすめ分配ぶんぱいしてしまつた。彼等かれらたしかによろこんだ、しかぼくうれしくもなんともない。
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
つくゑまへにマツチはつて、かれれをてゐながら、其癖そのくせ大聲おほごゑげて小使こづかひんでマツチをつていなどとひ、女中ぢよちゆうのゐるまへでも平氣へいき下着したぎ一つであるいてゐる、下僕しもべや、小使こづかひつかまへては
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
前刻さつきせ、とつてめたけれども、それでも女中ぢよちゆうべてつた、となり寐床ねどこの、掻巻かいまきそでうごいて、あふるやうにして揺起ゆりおこす。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
自分じぶんおほかみにつまゝママれたやうママかほをして(多分たぶんほかからると其樣そんなかほであつたらうとおもふ)『やれ/\』とも『づ/\』ともなんともはず女中ぢよちゆうのすゝめる椅子いすこしおろした。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
わたひとりしかほ女中ぢよちゆうならばなにとせんことばがけられなばなにといはんはぢ上塗うはぬりはえうなきことなり車代しやだいといふもれたものけずともよしこのまゝにかへらんかいなしければこそゆき
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
浴室ゆどのだ、浴室ゆどのだ。ておいで。と女中ぢよちゆう追遣おひやつて、たふむやうに部屋へやはいつて、廊下らうか背後向うしろむきに、火鉢ひばちつかまつて、ぶる/\とふるへたんです。……老爺おぢいさん。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
主人あるじ忠實ちゆうじつひとであるから、非常ひじやう歡迎くわんげいしてれた。はひつてると女中ぢよちゆう一人ひとり
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
もすがら枕近まくらちかくにありて悄然しよんぼりとせし老人としより二人ふたりおもやう、何處どこやら寢顏ねがほところのあるやうなるは、此娘このむすめもし父母ちゝはゝにてはなきか、のそゝくさをとこはじめとして女中ぢよちゆうども一どう旦那樣だんなさま御新造樣ごしんぞさまへば
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
湯原ゆがはら温泉宿をんせんやど中西屋なかにしや女中ぢよちゆうである! いまぼくふでつてうち女中ぢよちゆうである! 田舍ゐなか百姓ひやくしやうむすめである! 小田原をだはら大都會だいとくわい心得こゝろえ田舍娘ゐなかむすめ! このむすめぼくつたのは昨年さくねんなつ
湯ヶ原より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
屹度きつとくるま今少いますこしの御辛防ごしんばうかるゝこほりつくやうなりうれしやとちかづいてればさてもやぶぐるまモシとこゑはかけしが後退あとじさりするおくりの女中ぢよちゆうソツとおたか袖引そでひきてもうすこまゐりませうあまりといへばとあと小聲こごゑなりをりしもふりしきるゆきにおたか洋傘かうもり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此二このふたつ悲劇ひげきをわつて彼是かれこれするうち大磯おほいそくと女中ぢよちゆうが三にんばかり老人夫婦としよりふうふ出迎でむかへて、その一人ひとりまどからわたしたつゝみ大事だいじさうに受取うけとつた。其中そのなかには空虚からつぽ折箱をりも三ツはひつてるのである。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
れてはゞかりさまといひもあへけぬうちにおいそぎなされなまなかおまをさずばほどつもるまいものおどくのこといたしたりおわびはいづれとおく門口かどぐちいぬこゑおそろしけれどおくりの女中ぢよちゆうほねたくましきに心強こゝろづよくて軒下傳のきしたづた三町さんちやうばかり御覽ごらんなされませあの提灯ちやうちん
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)