黴毒ばいどく)” の例文
老人「何、演説をしたがらないよりも演説をすることが出来ないのです。たいてい酒毒しゅどく黴毒ばいどくかのために舌がくさっているようですからね。」
不思議な島 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
かれ奉公ほうこうして給料きふれう自分じぶんつひやしてころでは餘所目よそめにはうたがはれる年頃としごろの卅ぢかくまで獨身どくしん生活せいくわつ繼續けいぞくした。そのあひだかれ黴毒ばいどくんだ。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しかし、向うが黴毒ばいどくなら、こちらはヒステリ——僕は、どちらを向いても、自分の耽溺の記念に接しているのだ。どこまで沈んで行くつもりだろう?
耽溺 (新字新仮名) / 岩野泡鳴(著)
色情狂、殺人狂、中風患者、一寸法師等々々の精神異状者の脳髄のフォルマリン漬(いずれも肥大、萎縮、出血、又は黴毒ばいどくに犯された個所の明瞭なもの)
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その倦怠を覚えかけたところへ、二十五六になる一人の男が診察を受けに来ました。診察の結果、黴毒ばいどくの初期だとわかりましたから、その旨を告げると、男は
暴風雨の夜 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
『何とでも吐かせ、公娼制度は黴毒ばいどく防止に必要で欠くべからざるもんだす』とこうやってやりますと
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
古代丁抹伝説集パムペピサウ』などの史詩に現われている妖術精神や、その中に、黴毒ばいどく癲癇てんかん性の人物などがさかんに例証として引かれている——そのくらいの事は、当然憶えてなければならないはずだよ。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
俺は黴毒ばいどくなんかにはかからないとか何とか云って威張っている奴の血液の中にコッソリ居残っている黴毒の地下細胞菌が、ずっとあとになって色んな悪戯いたずらをはじめる。
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ある女が良人おっとに復讐するために、夜毎に街へ出て春を売り、それによって黴毒ばいどくに感染し、然る後良人にうつそうとしたという例が挙げてありますが、かような復讐方法は
印象 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
「テュードル家黴毒ばいどく並びに犯罪に関する考察」
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
それに、あの人は若いときにひどい黴毒ばいどくをやってその毒が抜け切らないのか、お酒を飲んだり心配ごとがあったりすると、陽気な性質ががらりと変わって妙な行動をとったりするのでした。
それも禁厭まじないとか御祈祷とかいうような非科学的なものじゃない。……つまり今まで話して来たように呉一郎は、黴毒ばいどくとか、結核とかいう肉体的の疾患に影響されて神経を狂わしたのじゃない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)