黄昏こうこん)” の例文
到着せしは黄昏こうこんの頃なりしが、典獄はねて報知に接し居たりと見え、特に出勤して、一同を控所に呼び集め、今も忘れやらざる大声にて
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
ただ、黄昏こうこんと共に身辺を去来して、そが珊瑚さんご念珠こんたつと、象牙に似たる手頸てくびとを、えもならず美しき幻の如く眺めしのみ。
るしへる (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
昼間何処いずくにか潜伏して、絶えて人にまみえず、黄昏こうこん蝦蟇の這出はいいづる頃を期して、飄然ひょうぜんと出現し、ここの軒下、かしこの塀際、垣根あたりの薄暗闇うすくらやみに隠見しつつ
妖僧記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
予が辞去じきょの後、先生例の散歩さんぽこころみられ、黄昏こうこん帰邸きてい初夜しょやしんつかれんとする際発病はつびょうついたれず。哀哉かなしいかな
矯首はじめて見る故園の家黄昏こうこんる白髪の人弟を抱き我をまつはるまたはる
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
鳥のまさに死せんとする、その鳴くや哀し、人のまさに死せんとする、その言や善し。彼はいよいよ死の旦夕たんせきに迫りたるを知り、十月二十五日より『留魂録』一巻を作り、二十六日黄昏こうこんに至って稿をう。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
黄昏こうこん戸にる白髪の人
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
十月二十六日黄昏こうこん書す二十一回猛士
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)