がん)” の例文
斎藤にも柳樽やなぎだるに瓦器盛りの肴を添えて送ることもある。きじねぎを添えてやったこともある。がんをやったこともある。太刀一腰の進物のこともあった。
富豪のうえに女がその地方きっての美人であったから、豪家の少年達は争うてがん結納ゆいのうを持ちこんで婿になろうとしたが、どれもこれも女の父親の気にいらなかった。
阿宝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
初茸、松茸、椎茸、木くらげ、白茸、がん茸、ぬめり茸、霜降り茸、獅子茸、鼠茸、皮剥ぎ茸、米松露、麦松露なぞいうきのこ連中がある夜集まって、談話会を始めました。
きのこ会議 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
灰でもよいからとてざるに盛って帰り、沼にあるがんに向って、「鴈の眼さ灰入れ」と連呼してその灰を蒔くと、たちまち鴈の眼に入ってこれをたおし、爺拾い帰って汁にして食う。
○ がん代見立しろみたて
料理れうりしてがんいつはり食せけるに不思議や條七は五十日たつたゝぬにかみぬけ癩病らいびやうの如く顏色がんしよくも變り人交際つきあひも出來ぬやうに成ければおてつは仕濟したりと打よろこび條七に打むかひお前は入聟いりむこの身斯る業病ごふびやうになりては先祖せんぞすまず早く實家へ歸りくれよといとつれなくも言ければ條七も詮方せんかたなく前世ぜんせの業と斷念あきらめるより外なしと女房娘を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
がん、干鯛、黒塩三十桶、刀一腰(助包)持参に及んだから、実隆はこれに対面し、かつその返礼として、以前義尚将軍から鉤りの里で拝領した太刀一腰を遣わしたとある。