鬚髯ひげ)” の例文
あごから頬へかけての鬚髯ひげはありませんが、病気中は剃らなかったと見えて、一分いちぶに足らぬ黒い濃い毛が密生しておりました。
髭の謎 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
山陽ホテルの駅前街路を見晴らす豪華な一室に、立派な緞子どんすの支那服を着た、鬚髯ひげと眉毛の長い巨漢おおおとこが坐っていた。
人間レコード (新字新仮名) / 夢野久作(著)
一人ひとり張飛ちやうひやせよわくなつたやうな中老ちゆうらう人物じんぶつ一人ひとり關羽くわんう鬚髯ひげおとして退隱たいゝんしたやうな中老ちゆうらう以上いじやう人物じんぶつ
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
飛白かすりの筒袖羽織、禿びた薩摩下駄さつまげた鬚髯ひげもじゃ/\の彼が風采ふうさいと、煤竹すすたけ色の被布を着て痛そうにくつ穿いて居る白粉気も何もない女の容子ようすを、胡散うさんくさそうにじろじろ見て居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
色眼鏡いろめがねをかけて顔いっぱいに鬚髯ひげをはやしていましたから、こいつ胡散うさんな奴だと思ってせにかかりますと、先方もさるもの、猛然として私をつきのけようとしましたので、次の瞬間、ドタン
紅色ダイヤ (新字新仮名) / 小酒井不木(著)