馬鹿馬鹿ばかばか)” の例文
それをそばに聞いていた先生は、「本当をいうと、私は精神的に癇性なんです。それで始終苦しいんです。考えると実に馬鹿馬鹿ばかばかしい性分しょうぶんだ」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ただ今、皆さんにむかって、私が、かりに、一と一を加えると、いくつになりますか、と問うたとしたら、キット皆さんは「なんだ馬鹿馬鹿ばかばかしい」といって御立腹になりましょう。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
無言だまっていろと口をかためられたのですから、薬売りは一人で気味るがりながら、そのうちまことにはないようと祈ったり、そんな馬鹿馬鹿ばかばかしいことがありようはないと思ったりして
糸繰沼 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「嫉妬じゃないですが——そんな、馬鹿馬鹿ばかばかしい感情はないですが、ロボを愛するという事は、結局、僕に、資格がない、という事を語っていますからね。侮辱の一種だと思いますよ。」
ロボットとベッドの重量 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
ぐにたツてられねえもの、どうも幾許いくらたくつてもられません、あまり馬鹿馬鹿ばかばかしくつて口惜くやしいたツて口惜くやしくねえたツてたまらないもの……。と鼻息はないきあらく思ふやうに口もきけん様子。
心眼 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
馬鹿馬鹿ばかばかしいことに威張いばるのはやめろ。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
馬鹿馬鹿ばかばかしい。何でもないじゃないか。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こんな乱暴な行為を、上品な今の空気のなかに育ったあなた方に聞かせたら、定めて馬鹿馬鹿ばかばかしい感じを起すでしょう。私も実際馬鹿馬鹿しく思います。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし清がなるなると云うものだから、やっぱり何かに成れるんだろうと思っていた。今から考えると馬鹿馬鹿ばかばかしい。ある時などは清にどんなものになるだろうと聞いてみた事がある。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
冴返さえかえるなどと云う時節でもないに馬鹿馬鹿ばかばかしいと外套がいとうえりを立てて盲唖もうあ学校の前から植物園の横をだらだらと下りた時、どこでく鐘だか夜の中に波を描いて、静かな空をうねりながら来る。
琴のそら音 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)