飯鉢めしばち)” の例文
各自がうちから持って来た盛相飯もっそうめしあとにして、真中に置いた五しょう入りぐらいな飯鉢めしばちの中にある団子だんごを指でつまんで旨そうに喫いだした。団子は煮た黒い黍団子きびだんごであった。
岩魚の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
もとより田舎の勝手道具ばかりであるから小品はない。飯鉢めしばち、片口、かめ、壺、大鉢、擂鉢すりばち等を作る。出たものを選べば窯毎に一つや二つの名器は必ず得られるであろう。
現在の日本民窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
別当はぎょろっとした目で、横に主人を見て、麦箱の中に抛り込んである、ふちけた轆轤ろくろ細工の飯鉢めしばちを取って見せる。石田は黙って背中を向けて、縁側のほうへ引き返した。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
三本ともふしを中央に置き、その点を麻にて七巻き半巻きつけ、その上に金輪にあらざる飯鉢めしばちの蓋を載せ、その蓋の内には狐狗狸の三字を書し、その蓋の上には奇数の手を載するを規則とす。
妖怪玄談 (新字新仮名) / 井上円了(著)
古伊賀こいが水指みずさし種壺たねつぼでさえあった。あの茶碗ちゃわんは朝鮮の飯鉢めしばちであった。上手じょうての華麗な美で、よく「渋さ」の域に達したものがあろうか。もとより雑器のみが工藝ではない。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
婢は廊下まで持って来てあった黒い飯鉢めしばち鉄瓶てつびんって来たところであった。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
窯はわずか一個よりないが、年に五、六回は焼くというから、相当地方的需要があることが分る。長型丸型の水甕、片口、飯鉢めしばち、平鉢、だらい、切立きったて等いう名は地方窯に相応ふさわしい。
現在の日本民窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「では、ここへ飯鉢めしばちと茶を置きますから、どうぞごゆっくり」
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「今飯鉢めしばちと茶を持って来ます」
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)