食指ひとさしゆび)” の例文
また鼻から出たにしたところで、鼻先から一尺四、五寸も前へ突出つきだした食指ひとさしゆびの上へ、豆粒程のおおきさだけポタリと落ちる道理はないのだ。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
「満足出来ない?」と、小さいが光る目で見て、「一体そんな事を云つて、君は恋した経験があるのか。」と、湯村は食指ひとさしゆびで小村を指した。
茗荷畠 (新字旧仮名) / 真山青果(著)
「そやけど、大けな聲で言へんが、太政官の家は代々レコ根性があるちうで、……」と、助役は聲を密めて、右の食指ひとさしゆびで鍵の手の形をして見せた。
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
右の手の食指ひとさしゆびを突立ててあたかも剣をもって空中を切断するように縦横無尽に切り立て、それでもなお霰弾がどしどしと平原に向って降り付けると
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
調べた結果、有喜子の食指ひとさしゆびの内側がそげていたということなども分ってまいりました。
機密の魅惑 (新字新仮名) / 大倉燁子(著)
大佐はそれから何か考え考え腰をかがめて、携帯電燈の射光を候補生の眼に向けた。私と同様に血塗ちまみれになった、拇指おやゆび食指ひとさしゆびで、真白に貧血している候補生の眼瞼がんけんを引っぱり開けた。
戦場 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いきなり小判を右手の拇指おやゆび食指ひとさしゆびとの間に立てて、小口をつばで濡らすと、銭形の平次得意の投げ銭、山吹色の小判は風を切って、五六間先の家光の手にある茶碗の糸底いとぞこ発矢はっしと当ります。
死体の右の手を持ち上げて調べて見ると食指ひとさしゆび尖端さきに泥がついて居た。
呪われの家 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
七人の親指おやゆび食指ひとさしゆびとが、皆源右衞門の擧の上に集つたところで、源右衞門は「よしか。」と一聲、パツと指を開くと、七つの手に一本づゝ紙捻こよりがブラ下つた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
いきなり小判を右手の拇指おやゆび食指ひとさしゆびとの間に立てて、小口をつばらすと、錢形の平次得意の投げ錢、山吹色の小判は風をきつて、五、六間先の家光の手にある茶碗の絲底いとぞこ發矢はつしと當ります。
不意に何か吾輩の食指ひとさしゆび中央まんなかにポタリと落ちた冷たいものがある。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
ガラッ八は眼の前へ持って行った食指ひとさしゆびげてみせました。