風姿なり)” の例文
新九郎はその人達を見ると、また一縷いちるの未練をつないで、およその風姿なり恰好かっこうを話し、この街道でそれらしい人を見かけなかったかと訊ねてみた。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「見すぼらしい風姿なりをしてはならない。」とお葉はその時思ひながら、少しも悲しいことはなかつたのであつた。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
が乗客はまだいずれも雪国らしいぎょうさんな風姿なりをしている。藁沓わらぐついて、綿ネルの布切で首から頭から包んだり、綿の厚くはいった紺の雪袴もんぺ穿いたり——女も——していた。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
「不良」の中でも、屈指の少女はかえって質素な風姿なりをしている。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
醜い風姿なりを日にさら
妄動 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
「割にいい風姿なりをしてるわね。」といふ聲が耳に入つたので、鋭くお葉は杖をとめて見返つたのであつた。角には黒いポストがあつて、その後の人影はさだかでなかつた。
三十三の死 (旧字旧仮名) / 素木しづ(著)
ひとりは頭巾をつけ、ひとりは総髪そうはつ。どちらも大名の前に出られる風姿なりではない。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大抵の風姿なりをしても驚かぬ程、その競争は激烈である。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「はい、本郷妻恋つまごいでござります。一人旅にひけをみせまいと、わざとこんな風姿なりをしておりますが、挿花はなの師匠をしておりますもの、どうぞおついでがありましたら、お訪ねなされて下さいませ」
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すなわち武田伊那丸たけだいなまるは、眉目びもくをあさく藺笠いがさにかくし、浮織琥珀うきおりこはく膝行袴たっつけに、肩からななめへ武者結むしゃむすびのつつみをかけ、木隠龍太郎こがくれりゅうたろう白衣白鞘びゃくえしらさやのいつもの風姿なり、また加賀見忍剣かがみにんけんもありのままな雲水うんすいすがた
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)