風体なり)” の例文
旧字:風體
「いま出ていった提灯の連中は何者ですか。立派な風体なりをしていたが、真逆ここまで入ってきたわけじゃないでしょうね」
深夜の市長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
松坂木綿まつざかもめんのよれよれになったやつへ煮しめたような豆しぼりというやくざな風体なりをしているのだから、女が面くらったのもあたりまえで、立て膝のまま
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
そこにしばらくの間立って待っていると、間もなくよい都合に向うから、おあつらえ通りの奇妙な風体なりをした白髪頭の人が遣って来たから、姫は天にも昇らんばかりに喜んで
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
真正に寝かして置く積りと見えて、着物を出してくれないから、乃公は寝衣ねまきの上に敷布をかぶった。下には大勢人が詰めかけているから此様こん風体なりをして行けば直ぐに捉まる。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
呼声よびごえから、風体なり恰好かっこう、紛れもない油屋あぶらやで、あのあげものの油を売るのださうである。
雨ばけ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「そうですか、私も上海と広東へは、ちょと往ったことがあります、何か御商売でも」と謙作は云ったものの、その男の風体なりから押して漂泊癖ひょうはくへきのある下級船員ののんだくれであろうと思った。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
こんな風体なりをしていても中には本願寺へ五円十円のお賽銭さいせんを上げて行くのがあるそうだよ
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
成る程この街で、一番珍しい奇妙な風体なりをしている、一番長生ながいきの白髪頭の老人を見付け出して、その人の身の上話しを聞かしてもらえば、屹度きっと面白い新規の話を聞く事が出来るに違いない。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
こうした変わった風体なりで、柳生家の駕籠に乗っていようとは!
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
家にいる時の風体なりをしている。乃公が姉さんの方に気を取られている中に、清水さんは馬車から下りていた。二人は少しも口を利かぬ。花さんが先に乗って、清水さんは後から入ったようだった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)