顔馴染かほなじみ)” の例文
旧字:顏馴染
つぎゆふべ道子みちこはいつよりもすこ早目はやめかせ吾妻橋あづまばしくと、毎夜まいよ顔馴染かほなじみに、こゝろやすくなつてゐる仲間なかま女達をんなたち一人ひとり
吾妻橋 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
顔馴染かほなじみの道具屋をのぞいて見る。正面の紅木こうぼくたなの上に虫明むしあけらしい徳利とくりが一本。あの徳利の口などは妙に猥褻わいせつに出来上つてゐる。
続野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
その度に晴代から離れて待合の女中などと廊下で立話をしてゐる木山の姿が目についたが、その中には木山の顔馴染かほなじみらしい年増芸者の姿もみえた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
それで、爺さんな、勇助と顔馴染かほなじみだから、悪いやうには取計つてくれめえつてんだよ。
野の哄笑 (新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
それから駅の一寸顔馴染かほなじみの車屋さんのくるまに乗つて建長寺の方へ出掛けたんだ。久し振りで八幡さまの横を通り、あの小袋坂を登り、越え、下つた時の気持は僕としては悪い気持ではなかつた。
椎の若葉 (新字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
去年帰朝したばかりのY氏(Kはそれを顔馴染かほなじみだけだがよく知つてゐた)
くづれた土手 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)