頭脳ずのう)” の例文
旧字:頭腦
と、蔦之助つたのすけはまた悶々もんもんとだまって、いまはただ、この民部の頭脳ずのうに、神のような明智めいちがひらめけかし、とジッといのるよりほかはなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
頭脳ずのう明敏めいびんの優等生にこれぐらいのメントル・テストがわからないはずはありますまい。君心あれば臣心あり。ハッハハハハ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
歌にむかうとき彼女の頭脳ずのうは特別のはたらきをみせ、楽譜がくふをみてひとりで歌った。田舎いなかの子どもとしては、それはじつに珍らしいことだった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
何んだか私自身の頭脳ずのうがひどい混乱のあまりそんな具合ぐあいに唸り出しているのではないかと言うような気もされた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
頭脳ずのうの方も、岡村君は決して私に劣っては居ませんでした。けれども私のように凡ての学課を得意とし、凡ての学問を平等に愛する事は出来ませんでした。
金色の死 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
われわれのような俗人ぞくじんが論ずるから右のようになるが、しかし非凡ひぼんなる頭脳ずのう深遠しんえんなる学識がくしきをそなえた針目博士自身としては、新しい金属の創造などということは
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
帯広おびひろは十勝の頭脳ずのう河西かさい支庁しちょう処在地しょざいち、大きな野の中の町である。利別としべつから芸者げいしゃ雛妓おしゃくが八人乗った。今日網走線あばしりせんの鉄道が㓐別りくんべつまで開通した其開通式に赴くのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
僕はかくのごとき問題で長く頭脳ずのうを痛めたが、恥ずかしいことにはこれを自己に応用して問題を解決し得なかった。しかしてこれは今もなお出来たとは断言しがたい。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
投手の柳は新米だがその変化に富める球と頭脳ずのうの明敏ははやくも専門家に嘱目しょくもくされている、そのうえに手塚のショートも実際うまいものであった、かれはスタートが機敏で
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
五年生になったばかりの彼女は、幼い頭脳ずのうと小さなからだで、むりやり一家の主婦の役をうけもたされているのだ。どんなにそれがいやでも、ぬけだすことはできない。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
竹中半兵衛の頭脳ずのうも多分に働いた上の主従一体の力ではあるが、それを動かすにもっぱら足を運び舌を用い、生命を敵地にさらして、何度も密使行の危険をくぐっていたものは
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことに学者中には頭脳ずのうの透明鋭利えいりな者にして肉体のこれに伴わぬものがたくさんある。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「そうだ、これは富士男君の緻密ちみつ頭脳ずのうと、勇気に信頼しんらいしたほうがいい」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
と正三君はさすがに頭脳ずのう明敏めいびんだった。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)