頬髭ほおひげ)” の例文
ある朝事務所の前に、すばらしいイスパノスイザの高級車が停まって、頬髭ほおひげいかめしい年輩の執事が訪れて来ました。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
そのとき、ふと嘉三郎は、昨日、頬髭ほおひげ逆剃さかぞりをしていないのに気がついた。彼は髭を捻りながら立ち上がった。
栗の花の咲くころ (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
「サアその先を……」と綿貫わたぬきという背の低い、真黒の頬髭ほおひげはやしている紳士が言った。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
向うの席から力士のように大きくて、たくましいからだつきの男が立って来、二人の前に坐ると、白髪しらがまじりの頬髭ほおひげきながら、めし茶碗を突きだして、そっちの徳利にあるほうの酒をれ、と云った。
おごそかな渇き (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
余はかの燈火ともしびの海を渡り来て、この狭く薄暗きこうじり、楼上の木欄おばしましたる敷布、襦袢はだぎなどまだ取り入れぬ人家、頬髭ほおひげ長き猶太ユダヤ教徒のおきな戸前こぜんたたずみたる居酒屋、一つのはしごはただちにたかどのに達し
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
やがて二階へ上る大階段脇へ出ることは、いつかその道の逆を執事の頬髭ほおひげに案内されて、嬢の検分したところである。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「然しビフテキに馬鈴薯いも附属物つきものだよ」と頬髭ほおひげの紳士が得意らしく言った。
牛肉と馬鈴薯 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
しゃべるだけ喋った未亡人は、これから習慣の午睡ひるねをしなければならぬと、そのまま寝室にこもって、またさっきの頬髭ほおひげが、二階各室から、階下地階へと案内してくれる。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)