青々せいせい)” の例文
翻長太息はんちやうたいそくに堪へずしていはく台州たいしう有人ひとありと。古人が詩に心を用ふる、惨憺経営の跡想ふべし。青々せいせいが句集妻木つまぎの中に、「初夢やあけなるひもの結ぼほる」
経費なんかはどうでもなれという気になって、東奔西走しているうちに妙なものだね。到る処の漁村の背後に青々せいせい渺茫びょうぼうたる水田が拡がって行った。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ある日四方太、青々せいせい、余の三人が落合って居士もその中に加わって、四人で五目並べをしたことがあった。それもその紙の碁盤と泥の碁石とであった。
子規居士と余 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
夏祭の日には、家々の軒に、あやめや、菖蒲しょうぶや、百合ゆりなどの草花を挿して置くので、それが雨に濡れて茂り、町中がたちま青々せいせいたる草原のようになってしまう。
郷愁の詩人 与謝蕪村 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
こんな大望がむらむらと起ったものですから、かれの夢が、ゆうべ、あの丁字風呂の部屋を青々せいせいたる大海にし、異国の美しい市街を波のあなたに描いたのでしょう。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
青々せいせいたる春の柳、家園みそのゆることなかれ。まじはりは軽薄けいはくの人と結ぶことなかれ。楊柳やうりうしげりやすくとも、秋の初風はつかぜの吹くにへめや。軽薄の人は交りやすくして亦すみやかなり。
青々せいせいたる梧桐ごとうの下に箒木を手にしている老人は、老いかがんだ腰も重げにうめきながら、みにくいしわで一ぱいになった顔を、日のまぶしさにしかめつつやせ衰えたはぎをふんばり
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
が、それ等の聯想は必しもあの「悪の華」の色彩を帯びてゐるとは限つてゐない。僕はこの文章を草しながら、寧ろいつか読んだことのある青々せいせいの発句を思ひ出してゐる。——
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
(春は、爛漫らんまんたるもよい。けれど春は春の一瞬で去れ。花園のちりを一掃したら、夏の天下は、青々せいせいと若い者の腕にひきうけて、土も肥やし、樹々も刈り、天地の気を新たにしなければいけない)
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十月一日、松瀬まつせ青々せいせい上京、発行所に入る。
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
出代でがわりのおのが膳くなごりかな 青々せいせい
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
青々せいせい、千里の草も
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)