雲上うんじょう)” の例文
どうも、雲上うんじょうの特性というのか、後白河法皇のお気もちのみは、ぼくらの文学的神経や庶民感覚では、分かりにくいふしがしばしばある。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
四民同等の今日とて地下じげ雲上うんじょう等差ちがい口惜し、珠運をやすく見積って何百円にもあれ何万円にもあれさつで唇にかすがい膏打こううつような処置、遺恨千万
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
どうもお育ちがらはまた格別違ったもんだ。ありゃもう自然、天然と雲上うんじょうになったんだな。どうして下界のやつばらが真似まねようたってできるものか
外科室 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
やんごとない雲上うんじょうの女房でいらっしゃいましたから、姿かたちの美しさ、お顔の色の雪のような白さは、二十はたちほどにしか見えぬくらいでござりました
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
毎年宇治のめいを選んで雲上うんじょうたてまつり、「玉露」と名付けてほうを全国に伝ふ。当主を坪右衛門つぼえもんと云ひ一男三女を持つ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「人に髪を結ってもらって、今からそんな雲上うんじょうを言うものじゃないよ。」と、母親も癇癪かんしゃくを起して、口をとんがらかしてぶつぶつ言いながら、髪を引っ張っていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
雲上うんじょうから下界に降る心地して、惜しい嶝道とうどうを到頭下り尽した。石門を出ると、川辺に幾艘の小舟がつないである。小旗など立てた舟もある。船頭が上って来て乗れとすゝめる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「それは雲上うんじょうのこと、公卿くげの家じゃ」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「一日でも、あんな鳳輦にかしずいてみたら」と、雲上うんじょうの生活に、あこがれとあきらめをもって、自分たち庶民の宿命を、その後でさびしく眺め合った。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もとより田舎武者。雲上うんじょうにまで聞えているほど名のある者ではございませぬ」
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつは、世に聞いたこともない破格なる地下人ちげびと内昇殿ないしょうでんのおゆるし。われら雲上うんじょうに、かれら野臭のぐさい荒くれ者を、ただの一にんとて、同座あること、さきに古例なく、末のみだれもいかが。
たとえひとりの忠盛でも、帝座ていざにまぢかい殿上てんじょうへ、地下人を上げるなどは、かれらの狭量と排他性がゆるさない。雲上うんじょうの特権を破壊されると感じたのである。スガ目の伊勢こそは、油断がならぬ。