雪片せっぺん)” の例文
かれらが遠い空の中に見えなくなると、やわらかな雪片せっぺんしずかに落ちて来た。それは空中を遊び歩いているように見えた。
寒々と身に沁む雪片せっぺんの踊り、おどけたようなゴリウォークの踊り、すべてが詩であり、活きた絵画であった。
一陣ひとしきり大きな雪片せっぺんが風にあおられてたんぼの方から走って来た、立っている自分の胸はたちまち白壁のように真白になった。たださいわいに大きな吹雪はこれりで後は少し晴間となった。
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
帯の模様は廓大かくだいした雪片せっぺん。雪片は次第にまわりながら、くるくる帯の外へも落ちはじめる。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
庭の内では、の如く花の様な大小の雪片せっぺんが、んだり、ねたり、くるうたり、筋斗翻とんぼがえりをしたり、ダンスをする様にくるりとまわったり、面白そうにふざけ散らして、身軽みがる気軽きがるに舞うて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
洋燈らんぷつけて戸外そといずれば寒さ骨にむばかり、冬の夜寒むに櫓こぐをつらしとも思わぬ身ながらあわだつを覚えき。山黒く海暗し。火影ほかげ及ぶかぎりは雪片せっぺんきらめきてつるが見ゆ。地は堅く氷れり。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
夜になっても、大きな雪片せっぺんがなお暗い空からほの明るい地の上にしきりなしに落ちていた。