雨落あまお)” の例文
お政はきゅうにやとい女をんで灯明とうみょうめいじ、自分はちゃ用意よういにかかった。しとしとと雨はる、雨落あまおちの音が、ぽちゃりぽちゃりとちはじめた。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
就中なかんずく、恐ろしかったというのは、ある多勢おおぜいの人が来て、雨落あまおちのそばの大きな水瓶みずがめ種々いろいろ物品ものを入れて、その上に多勢おおぜいかかって、大石を持って来て乗せておいて、最早もうこれなら
一寸怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
伝吉はまず雨落あまおちの石へそっと菅笠すげがさ仰向あおむけに載せた。それから静かに旅合羽たびがっぱを脱ぎ、二つにたたんだのを笠の中に入れた。笠も合羽もいつのにかしっとりと夜露よつゆにしめっていた。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おひで老人の息子むすこくなりて葬式の夜、人々念仏を終りおのおの帰り行きしあとに、自分のみは話好はなしずきなれば少しあとになりて立ち出でしに、軒の雨落あまおちの石を枕にして仰臥ぎょうがしたる男あり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)