雑木山ぞうきやま)” の例文
旧字:雜木山
ほかの者は十郎ヶ峰のむこう雑木山ぞうきやまへ登って、鉄砲を持って待っている所へ、かくとは知らず孝助は、息をもつかず追掛おっかけて来て、石橋まで来て渡りかけると
川向う一帯、直立三四百尺もあろうかと思わるゝ雑木山ぞうきやまが、水際から屏風びょうぶを立てた様にそびえて居る。其中腹を少しばかり切りひらいて、こゝに停車場が取りついて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
石山、松山、雑木山ぞうきやまと数うるいとま行客こうかくに許さざるき流れは、船をってまた奔湍ほんたんに躍り込む。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しばらくは路がたいらで、右は雑木山ぞうきやま、左は菜の花の見つづけである。足の下に時々蒲公英たんぽぽを踏みつける。のこぎりのような葉が遠慮なく四方へのして真中に黄色なたまを擁護している。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
此処は西欝々うつうつとした杉山すぎやまと、東若々わかわかとした雑木山ぞうきやまみどりかこまれた田圃で、はるか北手きたてに甲州街道が見えるが、豆人とうじん寸馬すんば遠く人生行路じんせいこうろを見る様で、かえってあたりのしずけさをえる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
宜道がへっついの火を消して飯をむらしている間に、宗助は台所から下りて庭の井戸端いどばたへ出て顔を洗った。鼻の先にはすぐ雑木山ぞうきやまが見えた。そのすその少したいらな所をひらいて、菜園がこしらえてあった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
主婦は八幡下まで送りに来て、涙を流して白に別れた。田圃を通って、雑木山ぞうきやまに入るわかれ道まで来た時、主人は白を抱き上げて八幡下に立ってはるかに目送して居る主婦に最後の告別をさせた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)