かた)” の例文
五、六人の大官が、綺羅星きらぼしかためたように美々しい一団となって通りかかった。加納遠江守はすぐわかる。眼じりに有名な黒字ほくろがある。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
羊のむれは羊の群らしくそんなことに関係なく、しじゅう汽車に驚いてかたまってみたり、池に直面して凝議ぎょうぎしたりなんかばっかりしてる。
「やはり延暦寺えんりゃくじの区域だね。広い山の中に、あすこにかたまり、ここに一と塊まりと坊がかたまっているから、まあこれを三つに分けて東塔とか西塔とか云うのだと思えば間違はない」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ぢやが何にも残らんなあ、みいんなかついで行つて了ふんだ、使へるだけ使ひ尽して、そして死ぬ時にや、こつぽりとかためて持つて行くんだから。」と平七は嘆くやうに言つた——「まア仕様事がない、どうしたもんだ、どうも仕様がない。これだけにつくいてやれや、あれも満足やらうぞい。」
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
今の野原では、むこうに小さく人かげがかたまって、負傷者ておいに応急の手当てをし、下山の道をつづけるらしい。こっちへ来る気はいはない。
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
同時に、包囲軍からの矢、おびただしくこの望楼に飛来して、避難民ら口々に絶叫し、一隅にかたまって顫えおののく。
おびただしい烏の群が一かたまりになって降りて宿無犬が十匹余りも遠巻きに吠え立てている。
のきの端に富士を仰いで、春から夏を飛んで、すぐ秋虫の音を聞く山家住まい、あみだ沢は山あいに五、六軒の草葺くさぶきがかたまって炭焼き、黒水晶掘り、木こりにかりうど、賤機木綿しずはたもめん
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
一夜寝もやらず、室内を歩き廻って明かした城主札木合ジャムカが、髪を掻きむしり、腰の大刀を揺すぶって、物凄い顔で往きつ戻りつしている。侍女二三、隅にかたまって恐怖に震えている。