集合あつまり)” の例文
彼の読んでいるものは、活字の集合あつまりとして、ある意味を以て、彼の頭に映ずるには違ないが、彼の肉や血に廻る気色けしきは一向見えなかった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
まことに世の中は不幸なる人の集合あつまりと云うても差支さしつかへない程です、現に今まこゝ団欒よつてる五人を御覧なさい、皆な社会よのなか不具者かたはです、渡辺の老女さんは
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
偖又雲助共は再び一所に集合あつまり己れはすねを拂はれわれは腰を打れたりと皆々疵所きずしよさすり又は手拭てぬぐひなどさいて卷くもあり是では渡世が六ヶ敷と詢言々々つぶやき/\八九人の雲助共怪我を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
後に残る白い雲のやうな煙の群、その一団一団の集合あつまりが低く地の上にふかと見て居ると、急に風に乱れて、散り/″\になつて、しまひに初冬の空へ掻消すやうに失くなつて了つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
したがって五うんとは、要するに、形のあるものと、形のないもの、すなわち有形の物質と、無形の精神との集合あつまりを意味するもので、仏教的にいえば「色」と「心」、つまり色心の二法となるわけです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
かれんでゐるものは、活字の集合あつまりとして、ある意味を以て、かれあたまえいずるにはちがひないが、かれの肉やまはる気色は一向見えなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
初心うぶで、複雑こみいつた社会よのなかのことは一向解らないものばかりの集合あつまりではあるが、流石さすが正直なは少年の心、鋭い神経に丑松の心情こゝろもちを汲取つて、何とかして引止める工夫をしたいと考へたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)