隠蔽かく)” の例文
旧字:隱蔽
ところが、瀬川先生や高柳君の細君のやうに、其を隠蔽かくさう/\とすると、余計に世間の方ではやかましく言出して来るんです。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
さざい壺々口つぼつぼぐち莞然にっこと含んだ微笑を、細根大根に白魚しらうおを五本並べたような手が持ていた団扇で隠蔽かくして、はずかしそうなしこなし。文三の眼は俄に光り出す。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
人さし指中指の二本でやゝもすれば兜背形とつぱいなり頭顱あたま頂上てつぺんを掻く癖ある手をも法衣ころもの袖に殊勝くさく隠蔽かくし居るに、源太も敬ひ謹んで承知の旨を頭下つゝ答へけるが
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
あの先生のは可厭いや隠蔽かくさんからいゝ。最初からもう名乗つてかゝるといふ遣方ですから、左様さうなると人情は妙なもので、むしろ気の毒だといふ心地こゝろもちに成る。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
免職と聞くより早くガラリと変る人の心のさもしさは、道理もっともらしい愚痴のふた隠蔽かくそうとしても看透みすかされる。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
人さし指中指の二本でややもすれば兜背形とっぱいなり頭顱あたま頂上てっぺんく癖ある手をも法衣ころもの袖に殊勝くさく隠蔽かくし居るに、源太もうやまつつしんで承知の旨を頭下げつつ答えけるが
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
と文平は女の耳の側へ口を寄せて、丑松が隠蔽かくして居る其恐しい秘密を私語さゝやいて聞かせるやうな態度を示した。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)