降誕祭クリスマス)” の例文
何一つ遺留品も手懸りもなく、犯人はいまだに眼星がついていなかった。すると、その年の降誕祭クリスマスの翌日、十二月二十六日の夜である。
双面獣 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
岳樺たけかばの枝に氷雪がからみついて降誕祭クリスマスの塔菓子のようにもっさりともりあがり、氷暈ハロオに包まれてキラキラと五彩にきらめきわたっている。
降誕祭クリスマスの前には既に来るはずであったその日も半年ほど延びて、旅で迎える三度目のあの祭と、翌年の正月とをも、岸本は巴里パリの下宿の方で送った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
するとある年のなたら(降誕祭クリスマス)の悪魔あくまは何人かの役人と一しょに、突然孫七まごしちいえへはいって来た。孫七の家には大きな囲炉裡いろりに「おとぎもの
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そしてようやく、疲れはてて床についた。しかし彼は降誕祭クリスマス前夜の子供のように興奮していて、一睡もできないで、終夜蒲団ふとんの中で寝返りをしていた。
モチは新年に好んで用いられる食品で、恰度ニューイングランド人が感謝祭と降誕祭クリスマスとに、沢山ミンスパイや南瓜のパイをつくるのと同じように、日本人も餅を調製する。
降誕祭クリスマスの朝、彼は癇癪を起した。そして、家事の手伝に来ていたばあやを帰して仕舞った。
或る日 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
わしは現在の降誕祭クリスマスの幽霊じゃ」と、精霊は云った。「わしを御覧よ。」
昨夜ゆうべはネ、教会の降誕祭クリスマスで御座いましたが、今年は先生の御顔が見えず、面白い御話を御聞きすることが出来ないツてネ、去年の時のことばかり言ひ出して、皆様さびしい思をしたので御座いますよ
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
といい「なにしろ今日は、降誕祭クリスマス前夜のことだから、ひとりで夜食レウェイヨンをなさるのは、さぞ味気あじけないだろう。それに、妻も非常に希望しているから」
黒い手帳 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
岸本が旅にあった頃、欧羅巴ヨーロッパの戦争が始まって二度目の降誕祭クリスマスを迎える前に、彼の帰国のうわさが一度留守宅へ伝えられた時の話なぞも、めずらしく節子の口から出て来た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
夜のお召は、宝石という宝石をちりばめて降誕祭クリスマスの晩のように立派に出来ました。
ようか月の晩 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
やがて降誕祭クリスマスを祝う時刻も近づいたので、私達は連立って技手の家を出た。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
太平洋戦がはじまってから三度目の降誕祭クリスマスが来かけていた。
ノア (新字新仮名) / 久生十蘭(著)