鈍間のろま)” の例文
で、鈍間のろまな巡査も思わず身軽について行った。一分半ばかりで、このフランスの探偵は、イギリスの警部と私服の巡査とを仲間に加えた。
私が想像した通り、鬚が赤くて、眼がビィドロのようで、鈍間のろまらしい風付ふうつきであった。みな黒いざるのような帽子を、かぶっていた。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
「自分のお金の高が判らないなんて、そんな鈍間のろまなおじさまじゃないでしょう、はっきり正直にいうものよ、これだけはいっていたんでしょう。」
蜜のあわれ (新字新仮名) / 室生犀星(著)
動物にしても海鞘ほやのように腎臓のない規則外れの奴があるが、こいつはとても動物とは思えないほど鈍間のろまなんだから、このことからも残滓の排泄を知らないで
植物人間 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
ところが、多くの場合男は女にとつて天使エンゼルどころか、牛のやうに鈍間のろまで、おまけに牛のやうに獣物けだものである。
あれだってお前、ることは鈍間のろまでも、人間は好いものだよ。それにあの若さで、女買い一つするじゃなし、お前をお嫁にすることとばかり思って、ああやって働いているんだから。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「あんまり鈍間のろまらしくつて、こんな遊びには向きさうもないぢやございませんか。」
宿すに足ったろうという述懐じゅっかいさ。まいまいつぶろという奴は鈍間のろまの表象だからこの際調和が好い。それに一つところに凝っとしていないから、これで鼻の下の寸法が可なり長く現れている
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
何処どこまでも自分の鈍間のろまと云うものであろうか。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
男はのろいもので、この瞬間女を飛切り美しいものに見るばかりでなく、自分をも非常な勇者のやうに思違おもひちがへをする。鈍間のろまなる男よ、なんぢはいつも女の前に勇者である。
「西洋を知らない。ほんとにおまへさんのやうな鈍間のろまなんざ、一人だつてありはしないよ、西洋には。」