金鎚かなづち)” の例文
たとえば刑務所と工場の仕事場では音楽に交じる金鎚かなづちの音が繰り返され、両方の食堂では食器の触れ合うような音の簡単な旋律が繰り返される。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
ビスケットをかごの横木の間に糸で結びつけてやる。すると、彼が食うのはその糸だけだ。彼はまるで金鎚かなづちのような勢いで、そのビスケットを押したり突っついたりする。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
漸次仕事が広げられ、のこぎりはさみ金鎚かなづちに及び、更に栄えるにつれて機械を入れ、ナイフ、フォークの類にも及び、盛に中央の都市のもとめに応じ大きな産業へと発展しました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
店の前で、荷造りをしていた者が、金鎚かなづちを指して、土蔵ならびの向うに見える黒塀を教えた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「自分自身をです。このとおり、ある日私は金鎚かなづちで、この手にくぎを打ち込みました。」
そして、もう来年らいねんなつきゃくがあるまでは、この小舎こやにもようがないといわぬばかりに、めきったの一つ一つに、ガン、ガンとくぎをちつけていました。かれは、金鎚かなづちをふりげながら
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「お前、金鎚かなづちを持って来たか。」また一方の男がきいた。
金鎚かなづちで前歯を砕くらしい。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
作った者の形に対する優れた本能が感じられた。一つの金鎚かなづちにもそれが見出された。
思い出す職人 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「なに開かない。開かなかったら金鎚かなづちを持ってきて叩きこわして入るがいい」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)