野糞のぐそ)” の例文
「——やいっ、逃げるのかっ。俺はまだ生きてるぞ。生かすとも、殺すとも、片づけてから行けっ。薩摩の奴らは、野糞のぐそれても、尻をふかねえのかっ、やいっ」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
支那の荷持にもち野糞のぐそれてると誤解されたって手柄てがらにもならない。そこで無理に歩いた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
恋の句を作るのは恋をすることであり、野糞のぐその句を作るのは野糞をたれる事である。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
希臘ギリシヤ羅馬ローマ以降泰西たいせいの文学は如何ほどさかんであったにしても、いまだ一人いちにんとして我が俳諧師其角きかく一茶いっさの如くに、放屁や小便や野糞のぐそまでも詩化するほどの大胆をあえてするものはなかったようである。
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
野糞のぐそる外が濱邊や玫瑰花まいくわいくわ
熊の足跡 (旧字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
野糞のぐそそと浜辺はまべ玫瑰花まいくわいくわ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
べらぼうめ! と、こいつは、あのじんくせで、——西行さいぎょうとか芭蕉ばしょうとかいう男みてえに、尾花おばな蒲公英たんぽぽにばかり野糞のぐそをしてフラフラ生きているような人間になって、ほんとの、生きた陶器が作れるかい。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)