釈然しゃくぜん)” の例文
旧字:釋然
和議に、釈然しゃくぜんたり得ない武将たちが、数正が君前に呼ばれたことを、さらに擬議ぎぎしてさかんに、憤懣ふんまんをもらし合っているらしい。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小生の本心はみだりに他を攻撃して楽しむものにあらず、ただ多年来たねんらいこころ釈然しゃくぜんたらざるものをしるして輿論よろんただし、天下後世のめにせんとするまでの事なれば
先生の本旨ほんしは、右二氏の進退しんたいに関し多年来たねんらい心に釈然しゃくぜんたらざるものを記して輿論よろんただすため、時節じせつ見計みはからい世におおやけにするの考なりしも、爾来じらい今日に至るまで深く筐底きょうていして人に示さざりしに
瘠我慢の説:01 序 (新字新仮名) / 石河幹明(著)
そうしてお互い、どうしても釈然しゃくぜんと笑いあうことができないのである。
ここは一つ釈然しゃくぜんと笑って、乾坤二刀を交換せざるを得ない立場だった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
故に、万一主人摂津守が釈然しゃくぜんと解けて、左右そうなく降伏に出られた場合は、どうかご助命の儀だけは伏しておねがい申しておく
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ぜひなく、直義はそう言ってまもなく退がって行ったが、決して釈然しゃくぜんとした色ではなかった。いや奮然と死を期して別れ去ったものと見られなくもない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「お待ち下さい。……仰っしゃることは、自己の弁護にはなりましょう。けれど、世間から見れば、醜いもの頬かぶりといいましょう。世人は、釈然しゃくぜんとしますまい」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、その機会を逸したと知ると、信玄は釈然しゃくぜんとして、もうそれにこだわってなどいなかった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こう彼はさとしたが、諸将の沈黙には、なお釈然しゃくぜんとしきれぬものがぬぐいきれない。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、釈然しゃくぜんとしたが、不破、金森の二使はなお歓びを迂濶うかつに現わさなかった。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
などという依然たる旧態きゅうたいの保守一点張りな老臣組もあったが、いかに時流にうとい政職まさもとの眼からてもそんな小策や糊塗ことでは、もう到底、毛利家とて釈然しゃくぜんたらざることは余りにも明確であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義貞はあれいらい、正成なる者に、決してまだ釈然しゃくぜんとはしきれていない。——あれいらいとは、もちろん義貞が西征のに立った三月、正成が直々じきじきに、みかどへ諫奏かんそうし奉ったというそのことである。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
曹操は釈然しゃくぜんと容れて
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)